朝鮮・江界飛行場跡地 [└日本統治時代の飛行場]
2017年7月作成 2022/1更新
北朝鮮北部にある江界(こうかい)市。
中国との国境まで40kmのこの場所に「江界飛行場」がありました。
水路部の資料に載っている朝鮮半島の飛行場を順番に記事化しているのですが、
ここまでずっと「朝鮮総督府逓信局管理の公共用陸上飛行場」ばかりでした。
11番目にして管理者は、平安北道警察部、そして種別は警備用陸上飛行場です。
ここは滑走路の形は単純なんですが、位置決めに手間取りました。
飛行場西隣に飛行場と並走するように満裏本線が走っています。
滑走路の長さは650mで、水路部の地図では滑走路の北端から300m弱南下した辺りに駅が描かれております。
つまり、滑走路のほぼ真ん中らへんの西隣に駅があります。
で、最初はこの駅の位置に合わせて作図しようとしました。
一方、満裏本線は飛行場の北側で西に曲がり、南側の方でも河に合わせて大きく蛇行していて、
どちらの線形を基準とするかで、滑走路と駅との位置関係が大きくズレてしまいます。
河の形は時代と共に大きく変わるからそこまで厳密にならなくてもいいとして、川の対岸の地形もどうもしっくりきません。
「アチラを立てればコチラが立たず」で、結局全体を見ながら最大公約数的な位置にしてあります。
線路と川に挟まれているので、東西方向はほとんどズレてないと思いますが、
南北方向は最大で数百メートルのズレが生じていると思います。
ご了承くださいませ。
結局駅との位置関係は大きくズレてしまいました。
もしかして駅の位置が変わったのかも(と自分に言い聞かせる)。
現地の方がこのマップ見たら怒らないかしらん。
ご覧の通りで現在はすっかり畑地になっていて、地割も滑走路方向とズレています。
資料には、11月~翌年3月までの冬季は地表凍結し、河面も結氷し通行可能とあるなど、
寒さが非常に厳しい土地のようです。
当「江界飛行場」については、日本語でググっても全然引っかからず、
英語(Kanggye Airfield)、ハングル(강계 비행장)でググってやっと出てきたのは、
K-36 - 江界#2飛行場(Kanggye#2 Airdrome)という米空軍識別コードのみ。
ということで、当江界飛行場は K-36ということのようなんですが、"#2" というのが私気になります。
#2が「第二飛行場」ということなら、#1 の「第一飛行場」がありそうなものですが、
ズラリと並ぶコード表に「江界」が登場するのはK-36のみ。
別サイトでは、
K-36について、Kanggye No. 1 とありました。
ナゾです。
■防衛研究所収蔵資料:「水路部 航空路資料第9 朝鮮地方飛行場及不時着陸場 昭和18年9月刊行」
から当飛行場の資料の一部を引用させて頂きました。
第11 江界飛行場(昭和18年4月調)
管理者 平安北道警察部。
位置 朝鮮平安北道江界郡公北面公仁洞。
(公仁駅の東方約100米、北緯40°55′0、東経126°36′0)。
種別 警備用陸上飛行場。
着陸場の状況
高さ
平均水面上約295米。
広さ及形状
本場は長さ南北630米、幅東西145米総面積9.9萬平方米の略長方形地域なり。
着陸地域は概ね図示の長さ南北630米、幅50米の滑走路を最適と認むるも
風向等に依りては滑走路を含む幅東西145米の整地地区を使用するも支障なし(付図参照)。
地表の土質
砂混り粘土質。
地面の状況
滑走路は砂混り粘土質の転圧舗装にして日射及降雨に因る影響なく平坦且堅硬なり・
滑走路の東西両側の整地地区は処々に凸凹せる箇所あるも概ね平坦にして夏季雑草繁茂す・
全般的に西方に向け1/200の下り片勾配を為す・排水概ね良好なるも滑走路以外の地域は降雨後処々に水溜を生ず・
11月至翌年3月間は積雪30糎に達し此の期間中は地表凍結し離着陸上好都合なりと言う。
場内の障碍物
なし。
適当なる離着陸方向
恒風の関係上夏季は南、冬季は北を適当とす。
離着陸上注意すべき点
東及び西方は山地にして低空旋回飛行は危険なり。
施設
舗装滑走路1條・平安北道警察部所属油庫1棟(高さ4米)あり。
周囲の状況
山岳及丘陵
本場は鴨緑江の支流秀魯江右岸河原に在り南北河流方向は稍開濶なる平坦地なるも
東、西方向は何れも山岳迫り東方約1粁に584米山、西方約2.5粁に820米山聳立す、
之より更に外方は本場を略中心とし標高1,100米内外の山岳重疊す。
樹林
至近に障碍となる樹林なきも東西両方向の山麓より山地一帯は高さ20米内外の森林を以て蔽わる。
河川
東方約300米に北流する秀魯江あり北方約8粁の江界村落付近より西流し幾多の支流を合し
東來江となり西方約50粁にして鴨緑江に合流す・南方約1粁に人馬用の渡船場あり・
冬季(12月至翌年3月間)は河面結氷し通行可能と為る。
(中略)
其の他
本場は嘗て仁可站飛行場と称する不時着陸場に過ぎざりしも昭和7年国境事變当時陸軍機の前進基地として使用せられ
其の後拡張整地工事を施し昭和14年11月警察機の離着陸場として設置せられ
目下平安北道警察部に於て主用中なり。
朝鮮・江界飛行場跡地
設置管理者:平安北道警察部
種 別:警備用陸上飛行場
所在地:朝鮮平安北道江界郡公北面公仁洞(公仁駅の東方約100m)
座 標:N40°55′09″E126°36′24″
標 高:295m
滑走路:630mx50m(整地地区:630mx145m)
方 位:18/36
(座標、滑走路長さ、方位はグーグルアースから)
沿革
1932年 陸軍機の前進基地として使用(それまでは不時着陸場「仁可站飛行場」だった)
1939年11月 拡張して警察機の離着陸場となる
この記事の資料:
防衛研究所収蔵資料:「水路部 航空路資料第9 朝鮮地方飛行場及不時着陸場 昭和18年9月刊行」