スペースジェット開発中止・1 [├雑談]
■とある個人サイト
「三菱に旅客機は作れない」
ネットでは既に何年も前からそんな論調で埋め尽くされている感がありましたが、
オイラがこの論旨のサイトを発見したのは、2008年頃でした。
ちょうどMRJ事業化が発表され、いよいよ設計が始まろうかというタイミングで、
当時はネットもマスコミも「日本の翼よ再び!!」の気運が大いに盛り上がっていました。
MRJの成功を熱望していたオイラにとって、そのサイトを見た第一印象は、
「ヘンな人がいるなぁ。なんでそんな水差すようなこと書くかね (;-ω-)」でした。
当時も「三菱にはムリ」という意見はあるにはあったんですが、
じゃあどうして「ムリ」なのかという根拠は提示せず、冷やかしのようにチョロッと書き捨てていく、
単なるアンチコメント的なものばかりでした。
ところがこのサイトは、根拠をきちんと示した上で、「三菱に旅客機は絶対に作れない」と断言していたのです。
サイト氏が提示した根拠を一言で述べるなら、「三菱の企業体質」ということになると思います
(理解不足で間違っていたら申し訳ないです)。
「三菱に旅客機は絶対に作れない」とする主張は当時の国内ムードとは真逆であり、
しかも氏の歯に衣着せぬ文体も相まって、かなり刺激的な、過激な記事でした。
例えば-
「国民1人当たり500円の金を巻き上げた挙句、結局大失敗する会社と、国民1人当たり500円の金を配り、成功する会社。あなたならどちらに旅客機作ってもらいますか? 金を巻き上げた挙句、確実に大失敗する会社を応援するなんて、バカですか?」
(一字一句正確ではないですが)ニュアンスとしてはこんな感じでした。
2008年当時、ホンダジェットは米国に続き欧州でも受注を開始していたのですが、
量産機の飛行も型式証明取得もまだまだ先のこと。
ましてや事業化して、それを軌道に乗せるところまで考えると、
「一民間企業でそれを成そうとするホンダより、国、地元自治体その他から手厚い援助を受けているMRJの方が確実」
という意見が(少なくとも匿名掲示板では)多かったように思います。
この記事を書くに当たって、期間を絞る条件で関連記事を検索してみたのですが、
今日広く見られるようになった「明暗分かれた両者」的な記事が登場し始めたのは、
「上期、販売数初の世界一」の報が流れた2017年でした。
それ以前の両者の扱いは、例えば2016年にこんな記事がありました。
「2015年の“MRJフィーバー”の陰に若干隠れた感があるが、もう一つ、国内企業が主体となって開発に成功したジェット機がある。ホンダジェットだ。」■
2015年といえば、MRJが初飛行した年です。
「“MRJフィーバー”」、「若干隠れた感がある」という言葉はこの頃の感覚をよく表していると思います。
ところが氏はそんな時期からホンダの方を高く評価しており、
しばしばホンダジェットを引き合いに出しては上記のような主張を展開したのでした。
二者についての氏の評価は、世間の評価と大きく異なっていた訳で、
当然ながらこれには反論コメントが続々書き込まれたのですが、氏はこれらにきっちり反論。
かなり感情的な、激しい議論が延々繰り広げられました。
結果として氏の反証記事はどんどん増えてゆき、その文書量がこれまた膨大で、
クリーム色の背景に黒文字でびっしり書き連ねたその量は、
スクロールしてもスクロールしてもなかなか最後に辿り着かない程。
「三菱の企業体質」なんて、受け売りの情報しか持たぬオイラ。
それとは対照的に、どんな批判/反論がこようが、氏は理路整然と、淡々と、
まったくブレずにそれらに返答し続けていました。
氏のあまりに自信に満ち溢れた主張を目の当たりにするうちオイラは、
「そ、そうなのかなぁ。でも開発成功して欲しいなあ(´・ω・`)」と思うようになりました。
ところが自信たっぷりに「絶対ムリ」とする氏の主張とは裏腹に、MRJは遅延を繰り返しつつも、
試験機の製造、ロールアウト、初飛行、型式証明取得に向けての試験飛行、米国に拠点設立と、
着実に段階を進めてゆきました。
2018年4月には三菱航空機の社長が「2020年半ばのデリバリーに向けて作業に勤しんでいる」と発表。
同年8月には開発責任者が「TCフライト(型式証明試験)を19年末までに終え、
2~3カ月後には型式証明を取得できるだろう」と語りました。
型式証明さえ取得できれば、すぐにも航空会社にデリバリー可能
(B787は型式証明取得から1ヵ月後にANAにデリバリーされた)ですから、
こうなると、もうデリバリー開始はカウントダウン状態も同然(個人の感想です)。
なんか自信たっぷりにいろいろ書いてたけど、件の氏の予想は外れちゃったようですなあ(o ̄∇ ̄o)
「何か弁明記事でも出してないかしらん」
なんて、野次馬根性で久々に記事を探したのですが、見つかりません。
あー。ねえ。そりゃあ、そうでしょうよ。
この頃のオイラは、そんな風に思ってました。
ところが…
その後の「一旦立ち止まる」から今回の事態となりました。
今回改めて期間の条件を絞って氏のサイトを検索したのですが、残念ながら見つけられませんでした。
もし残ってたら、超絶慧眼の持ち主として崇められたと思うのですが。。。
かなり早い時期から「三菱に旅客機は作れない」ときちんと主張した方としてネットで確認可能なのは、
オイラの知る限り一例だけあるのですが、
この方の主張は、「『作る』と『造る』は別次元」というメカニカルな面が根拠となっており、
企業体質を根拠とする氏とは別人物と思います■
オイラも含めてですが、「夢の翼 MRJ」的な意見が大勢を占めていた最初期から、
批判、反論の集中砲火を浴び続け、
それでもただ独り臆することなく堂々と持論を主張し続けただけでも凄いのですが、
今回の発表で、結局正しかったのは氏の方であると明らかになりました。
■開発中止の影響
上でも少し触れましたが、三菱スペースジェットの開発には、国民1人当たり約500円の税金が投入されています。
また、これとは別に愛知県は約100億円の支援をしており、
これは愛知県の人口7,491,010人で割ると、1人当たり1,335円となります。
部品を納入すべく研究開発に資金を投じた関連協力企業は多数ありますし、工場を新設した企業まであります。
当初の予定では2013年にデリバリー開始としていましたから、出荷を見込んでいた数多の企業にとっては、
待たされ待たされ、挙句に計画を絶たれてしまいました。
MRJ導入を決めた航空会社にとっても計画を狂わされました。
YS-11は型式証明を取得して販売までいけましたが、それでも経営的に大失敗だった点がトラウマとなり、
その後の開発気運に影響を与え、長い空白期を生み出したとされています。
今後も国産旅客機開発の気運は残り続けて欲しいのですが、
「15年がかりで型式証明すらだった」という今回の事態は国内ではYS-11以上に大きなトラウマとなり、
海外には非常に悪いイメージとして長く残り続けるはずです。
将来のいつか、国内で再び旅客機開発が始まったとして、海外を含む航空会社にセールスをする際、
今回の「2023年の開発中止」は必ず相手から突っ込まれるはず。
競合するメーカーだって、存分にネタにするでしょう。
オイラが挙げることができるのはこの程度なんですが、それでもこうして中止がもたらした諸々を考えると、
今回の中止の発表の仕方には、強い違和感を抱かずにはいられません。
これが「企業体質」ってことなのかしらん。
残された機体、三菱にとっては黒歴史の象徴なのかもしれませんが、
いつの間にかサッサと廃棄するのではなく、展示を希望する受け入れ先があれば、
移送、設置の費用まできっちり三菱が面倒みるくらいしてもいいんじゃないかと個人的には思います。
(続きます)
「三菱に旅客機は作れない」
ネットでは既に何年も前からそんな論調で埋め尽くされている感がありましたが、
オイラがこの論旨のサイトを発見したのは、2008年頃でした。
ちょうどMRJ事業化が発表され、いよいよ設計が始まろうかというタイミングで、
当時はネットもマスコミも「日本の翼よ再び!!」の気運が大いに盛り上がっていました。
MRJの成功を熱望していたオイラにとって、そのサイトを見た第一印象は、
「ヘンな人がいるなぁ。なんでそんな水差すようなこと書くかね (;-ω-)」でした。
当時も「三菱にはムリ」という意見はあるにはあったんですが、
じゃあどうして「ムリ」なのかという根拠は提示せず、冷やかしのようにチョロッと書き捨てていく、
単なるアンチコメント的なものばかりでした。
ところがこのサイトは、根拠をきちんと示した上で、「三菱に旅客機は絶対に作れない」と断言していたのです。
サイト氏が提示した根拠を一言で述べるなら、「三菱の企業体質」ということになると思います
(理解不足で間違っていたら申し訳ないです)。
「三菱に旅客機は絶対に作れない」とする主張は当時の国内ムードとは真逆であり、
しかも氏の歯に衣着せぬ文体も相まって、かなり刺激的な、過激な記事でした。
例えば-
「国民1人当たり500円の金を巻き上げた挙句、結局大失敗する会社と、国民1人当たり500円の金を配り、成功する会社。あなたならどちらに旅客機作ってもらいますか? 金を巻き上げた挙句、確実に大失敗する会社を応援するなんて、バカですか?」
(一字一句正確ではないですが)ニュアンスとしてはこんな感じでした。
2008年当時、ホンダジェットは米国に続き欧州でも受注を開始していたのですが、
量産機の飛行も型式証明取得もまだまだ先のこと。
ましてや事業化して、それを軌道に乗せるところまで考えると、
「一民間企業でそれを成そうとするホンダより、国、地元自治体その他から手厚い援助を受けているMRJの方が確実」
という意見が(少なくとも匿名掲示板では)多かったように思います。
この記事を書くに当たって、期間を絞る条件で関連記事を検索してみたのですが、
今日広く見られるようになった「明暗分かれた両者」的な記事が登場し始めたのは、
「上期、販売数初の世界一」の報が流れた2017年でした。
それ以前の両者の扱いは、例えば2016年にこんな記事がありました。
「2015年の“MRJフィーバー”の陰に若干隠れた感があるが、もう一つ、国内企業が主体となって開発に成功したジェット機がある。ホンダジェットだ。」■
2015年といえば、MRJが初飛行した年です。
「“MRJフィーバー”」、「若干隠れた感がある」という言葉はこの頃の感覚をよく表していると思います。
ところが氏はそんな時期からホンダの方を高く評価しており、
しばしばホンダジェットを引き合いに出しては上記のような主張を展開したのでした。
二者についての氏の評価は、世間の評価と大きく異なっていた訳で、
当然ながらこれには反論コメントが続々書き込まれたのですが、氏はこれらにきっちり反論。
かなり感情的な、激しい議論が延々繰り広げられました。
結果として氏の反証記事はどんどん増えてゆき、その文書量がこれまた膨大で、
クリーム色の背景に黒文字でびっしり書き連ねたその量は、
スクロールしてもスクロールしてもなかなか最後に辿り着かない程。
「三菱の企業体質」なんて、受け売りの情報しか持たぬオイラ。
それとは対照的に、どんな批判/反論がこようが、氏は理路整然と、淡々と、
まったくブレずにそれらに返答し続けていました。
氏のあまりに自信に満ち溢れた主張を目の当たりにするうちオイラは、
「そ、そうなのかなぁ。でも開発成功して欲しいなあ(´・ω・`)」と思うようになりました。
ところが自信たっぷりに「絶対ムリ」とする氏の主張とは裏腹に、MRJは遅延を繰り返しつつも、
試験機の製造、ロールアウト、初飛行、型式証明取得に向けての試験飛行、米国に拠点設立と、
着実に段階を進めてゆきました。
2018年4月には三菱航空機の社長が「2020年半ばのデリバリーに向けて作業に勤しんでいる」と発表。
同年8月には開発責任者が「TCフライト(型式証明試験)を19年末までに終え、
2~3カ月後には型式証明を取得できるだろう」と語りました。
型式証明さえ取得できれば、すぐにも航空会社にデリバリー可能
(B787は型式証明取得から1ヵ月後にANAにデリバリーされた)ですから、
こうなると、もうデリバリー開始はカウントダウン状態も同然(個人の感想です)。
なんか自信たっぷりにいろいろ書いてたけど、件の氏の予想は外れちゃったようですなあ(o ̄∇ ̄o)
「何か弁明記事でも出してないかしらん」
なんて、野次馬根性で久々に記事を探したのですが、見つかりません。
あー。ねえ。そりゃあ、そうでしょうよ。
この頃のオイラは、そんな風に思ってました。
ところが…
その後の「一旦立ち止まる」から今回の事態となりました。
今回改めて期間の条件を絞って氏のサイトを検索したのですが、残念ながら見つけられませんでした。
もし残ってたら、超絶慧眼の持ち主として崇められたと思うのですが。。。
かなり早い時期から「三菱に旅客機は作れない」ときちんと主張した方としてネットで確認可能なのは、
オイラの知る限り一例だけあるのですが、
この方の主張は、「『作る』と『造る』は別次元」というメカニカルな面が根拠となっており、
企業体質を根拠とする氏とは別人物と思います■
オイラも含めてですが、「夢の翼 MRJ」的な意見が大勢を占めていた最初期から、
批判、反論の集中砲火を浴び続け、
それでもただ独り臆することなく堂々と持論を主張し続けただけでも凄いのですが、
今回の発表で、結局正しかったのは氏の方であると明らかになりました。
■開発中止の影響
上でも少し触れましたが、三菱スペースジェットの開発には、国民1人当たり約500円の税金が投入されています。
また、これとは別に愛知県は約100億円の支援をしており、
これは愛知県の人口7,491,010人で割ると、1人当たり1,335円となります。
部品を納入すべく研究開発に資金を投じた関連協力企業は多数ありますし、工場を新設した企業まであります。
当初の予定では2013年にデリバリー開始としていましたから、出荷を見込んでいた数多の企業にとっては、
待たされ待たされ、挙句に計画を絶たれてしまいました。
MRJ導入を決めた航空会社にとっても計画を狂わされました。
YS-11は型式証明を取得して販売までいけましたが、それでも経営的に大失敗だった点がトラウマとなり、
その後の開発気運に影響を与え、長い空白期を生み出したとされています。
今後も国産旅客機開発の気運は残り続けて欲しいのですが、
「15年がかりで型式証明すらだった」という今回の事態は国内ではYS-11以上に大きなトラウマとなり、
海外には非常に悪いイメージとして長く残り続けるはずです。
将来のいつか、国内で再び旅客機開発が始まったとして、海外を含む航空会社にセールスをする際、
今回の「2023年の開発中止」は必ず相手から突っ込まれるはず。
競合するメーカーだって、存分にネタにするでしょう。
オイラが挙げることができるのはこの程度なんですが、それでもこうして中止がもたらした諸々を考えると、
今回の中止の発表の仕方には、強い違和感を抱かずにはいられません。
これが「企業体質」ってことなのかしらん。
残された機体、三菱にとっては黒歴史の象徴なのかもしれませんが、
いつの間にかサッサと廃棄するのではなく、展示を希望する受け入れ先があれば、
移送、設置の費用まできっちり三菱が面倒みるくらいしてもいいんじゃないかと個人的には思います。
(続きます)
コメント 0