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スペースジェット開発中止・4 [├雑談]

今回の開発中止の発表を受け、

すっかり「日本の旅客機製造 \(^o^)/オワタ」ムードになってしまいましたが、

一連の2番目の記事 で書いた通り、何か「凄い目玉」さえあれば、

世界の航空会社に買って貰える可能性は残っています(残ってて欲しい)。

しかもその目玉は、GTFエンジンのようにライバル機が追従するには時間のかかるものなら、

アドバンテージを得て実績作りができて尚良しです。

そんな凄い目玉となり得るものが何かないだろうか。

というのがこの記事の主旨です。


空気抵抗大変

高速道路を時速100kmで走っているとして、

窓を開けただけでもの凄い風圧ですし、手を出したら凄そうです(良い子は以下略)。

余談ですが、以前開催された2輪レースにて、

トップでチェッカーを受けた選手が不用意に腕をガッと突き上げてしまい、

風圧で腕が持って行かれ、肩関節が大変なことになってしまうという事故があったそうです(ノ><)ノヒイィィ

この時の選手がどの程度のスピードで突き上げたのか不明ですが、

国内2輪レースでも最高速度は普通に300km/hとか出ます。

仮にこの時の速度が200km/hだったとすると、100km/hで感じる風圧の何倍になるでしょう?

「空気抵抗は速度の2乗に比例する」という法則があり、

100km/hに対して200km/hですから、速度差は2倍で、2倍の2乗ですから、

2²=4 で、4倍ということになります。

100km/hでも凄い風圧ですから、その4倍ともなれば、そりゃあ持ってかれちゃっても無理はないです。


「空気抵抗は速度の2乗に比例する」は、「燃料消費量は速度の2乗に比例する」と言い換えることができます。

例えば速度を2倍にしたいなら先程と同じく、

2²=4

で、燃料は4倍必要。

となります。

空気抵抗が4倍になると聞いても、「ふーん、そうなんだぁ(棒)」としか思わないとしても、

特に自分でガス代を払っている方からすると、「燃料が4倍」と聞くと、

「燃料4倍も使うのにたった2倍しか速くならないの? ウソでしょ??」

と思いませんか?

「2乗倍で増えていく」

これは中学で習った二次関数(y=ax²) ですね。

グラフだと、直線じゃなくてあの進むに従って急激に増加する曲線のヤツです。

と、このように速度が上がるに従い空気抵抗は2乗倍で増え、ガス代が急上昇します。

ですので、飛行機が受ける空気抵抗(燃料消費量)は、それはそれは凄いことになります。

仮に913km/h(ジャンボの巡航速度)で飛んでいるとすると、

100km/hの時に感じる風圧の83倍(9.13²)ということになります。

こんなもの凄い抵抗をかき分けて進むのですから、それに伴って燃料消費量も大変なことになります。

ジャンボが巡航時に出している推力は15~26t程度なのだそうです(燃料量等で大きく変わる)。

この時の燃料消費量は、1時間当たりおおよそですが、7.5t~13tにもなります(燃料消費率0.5kg/kg/hで計算)。

巡航時は、抗力と推力がピッタリ釣り合った状態(抗力=推力) なので、

巡航時のジャンボには抗力(空気抵抗)が15~26t程度かかっており、

これをかき分けて進むために、1時間当たり7.5t~13tの燃料を消費していることになります。

ヒコーキが如何に燃料喰いかについて、分かり易いところでは、

「ジャンボは1分間でドラム缶1本分の燃料を消費する」という説明がしばしば用いられますね。

こんなに大量の燃料をドカドカ使うのですから、

このご時世ヒコーキが「燃費極悪の乗り物」としてやり玉に挙がってしまうのもムリないです。


ゆっくり飛ぶのはどうでしょう?

先程、「燃料消費量は2乗倍で曲線的に増えてゆく」と書きました。

「燃料をもの凄く増やしても、そんなに速くならない」

ということは、逆もまた真なりで、

「燃料をもの凄く減らしても、そんなに遅くならない」

ということになります。

これは環境問題の観点で言えば、

「速度を少し減らすだけで、燃料消費(二酸化炭素の排出)をもの凄く減らせる」

ということです。


このシリーズ記事の2 でエンブラエルE-JetシリーズとMRJの巡航速度比較について書きました 

今やリージョナルジェット界の王者となった感のあるエンブラエルですが、

現在世界中で飛びまくっているエンブラエルE-Jetシリーズの巡航速度はマッハ 0.82(870 km/h)。

現在運航中のリージョナルジェットのもう一方の雄であるボンバルディアのCRJシリーズも、

最大巡航速度は(型式により多少差があるのですが)エンブラエル機とほぼ同じ。

対してMRJはマッハ0.78なのでちょっと遅く、巷ではこれが"致命的な弱点"として散々揶揄されました。

マッハ 0.82のエンブラエル、ボンバルディア機に対し、MRJはマッハ0.78なので、

その速度差は0.9512倍となります。

2乗の法則でいくと、0.9512²=0.905 となりますので、燃料消費量≒0.905倍ということです。

MRJだって、本当はライバル機と同等の巡航速度に設定しようと思えばできたはず。

そこを少し低く設定することにより、巡航時の燃費消費は10%向上した計算になります。

元々MRJは、「環境適応型高性能小型航空機研究開発」という計画から始まっており、

設計検討段階から従来機に対して「燃費20%向上」を目標としていました 

そして「2割減を実現できれば、競合には簡単に真似できない」とも。

20%の内訳は、GTFエンジンの採用(10%)、機体、空力設計(10%)としていました。

(当時の資料を見返しても、「速度を落とすことで燃費改善しよう」とする意図は見つけられませんでしたけど)

では、たった5%ではなく、もっと大胆に巡航速度を低くすると、具体的にどのくらい燃料減らせるでしょうか。

減速率 燃料
1.0 1.00
0.9 0.81
0.8 0.64
0.7 0.49
0.6 0.36
0.5 0.25


速度を半減まで0.1刻みで出してみましたが、

一例として、速度を0.7倍にすると、0.7²=0.49なので、

速度を3割減らすと、消費燃料はナント半分で済みます。

但しこのデータの見方には注意が必要で、これは飽くまで「巡航時の」燃料消費の話です。

離陸開始から巡航高度、巡航速度に達するまでは、巡航速度の速いライバル機同様燃料を大量に消費します。

ですのでこの表の数字は、

「速度を3割減らすと搭載燃料が半分で済む」とか、

「速度を3割減らすとジェットエンジンも推力半分の小型で済む」とか、

そういうことではありません。

じゃあ、1回のフライト全体で見た時、巡航速度を下げることで得られる効果って、どの程度なんでしょうか?

これは、飛行距離によって巡航する割合が様々なので一概には言えないのですが、

航空新聞社2022.02.04「離陸時が最も多くの燃料を消費する」は迷信?

と題する記事がありました 

有料記事(100円。興味のある方は直接記事をご覧ください)なので、

拙記事の主旨に沿った部分だけご紹介させて頂きます。




記事では、2022年1月28日、ロンドン・ヒースロー空港を離陸し、

各目的地に向かう10便(距離も機材も様々)について、

離陸、上昇、巡航等の各フェーズで消費した燃料の割合を出してました。

特に「巡行時」に消費した燃料の割合について、結果は以下の通りでした。


行 先 使用機材 距 離 時 間 巡航時に消費した燃料の割合
シャルル・ド・ゴール空港 A319 348km 1時間20分 62%
エディンバラ空港 記載無し  534km 記載無し 68%
ドバイ国際空港 記載無し 5,500km 記載無し 95%
香港国際空港 A350 9,642km 12時間 96%

なんかオイラ、「巡航高度に達したところで搭載燃料の半分を消費」

とか聞いたことあるような気がするんですけど、

たった348km(羽田から直線距離で琵琶湖の辺り)の短距離路線でも、

巡航時の使用燃料は全体の62%に達するんですね。

前述の通り、巡航速度を3割落とすと、巡航時の使用燃料は半分になるのでした。

巡航時の使用燃料が全体の62%を占めるということは、それ以外(離陸、上昇、降下等)は38%。

で、巡航速度を3割落とすと、巡航時に使用される燃料(62%)が半分になりますので、

62÷2+38=69 で、

巡航速度を3割落とすと、1フライト全体の使用燃料は3割減となる計算に。

これなら短距離路線でも巡航速度を落とす価値はあるんじゃないでしょうか。


表の下2つの項目はドバイ行きと香港行きですが、

5,500kmで既に巡航時の割合が95%に達するんですね。

こんなに巡航時に消費する燃料の割合が大きくなると、

例えばドバイ行きの場合、95÷2+5=52.5 で、

速度を三割落とすと、トータルで見ても使用燃料は限りなく半分に近くなります。


上の方で、

「ジャンボが巡航時に出している推力は15~26t程度なのだそうです(燃料量等で大きく変わる)。」

「1時間当たり7.5t~13tの燃料を消費」

と書きました。

こんなに必要推力に幅があるのは、特に超長距離線の場合、自重とほぼ同じ重さの燃料を搭載しており、

燃料を消費するにつれて、どんどん軽くなるからです。

どの位燃料が残っているかでこれだけ必要推力に差が出ますから、

「巡航速度を3割落とすから、搭載燃料は半分強で済む」のであれば、

その機体はかなり軽くなりますから、離陸、上昇、加速に使う燃料が少なくて済みますし、

巡航に達してからの必要推力もかなり少なくなるはず。

実際の燃料消費量は、2乗倍で計算したのよりかなり少なくなるはずです。


ということで、巡航速度を落とすとかなり燃料節約になる訳ですが、

速度落とすとその分増えてしまうのが時間です。

では、速度を遅くすると、所要時間はどの程度延びるでしょうか。

仮に、エンブラエル機が巡航速度(870 km/h)で500kmの距離を飛行したとすると、所要時間は34分。

上の刻みで巡航速度を低くすると、速度、所要時間はそれぞれ以下の通りとなります。


減速率 速度 所要時間 増加
1.0 870km/h 34分 +0分
0.9 783km/h 38分 +4分
0.8 696km/h 43分 +9分
0.7 609km/h 49分 +15分
0.6 522km/h 57分 +23分
0.5 435km/h 1時間9分 +35分

この表は、仮に巡航速度で500km飛行する路線があったとして、

例えばエンブラエル機の0.7倍の速度に落すと、15分余計にかかりますよ。

ということです。


また、長距離路線についてなのですが、以前読んだ元パイロットの本の中で、

「飛行時間が11時間とすると、そのうち10時間が巡航である。」

とありました。

この場合、巡航速度を0.7倍に落とすと、全体の飛行時間は3時間増えて11時間→14時間になります。

その代わり、上の航空新聞社記事にある通り、消費燃料はほぼ半分になります。

短距離路線なら速度を3割落としても、せいぜい数十分程度でそこまで飛行時間は増えないですが、

長距離路線だと、時間の延びが1時間単位で増えていくのがやっぱりキツイですね。

成田~ニューヨーク便だと、往路12時間45分、復路14時間30分(Google調べ)。

仮に巡航速度を半減させると、飛行時間はほぼ倍になります。

復路だと、28時間という計算に!!(XДX)

オイラなら個室が欲しくなります。


巡航速度は簡単に落とせない

「巡航速度落せば燃費が良くなるんなら、試しにサッサと落してみればいいじゃん」

と思うかもしれませんが、飛行機の場合は簡単に落とせない事情があります。

飛行機は翼で揚力を発生させて飛んでいる訳ですが、

揚力の大きさは、速度と主翼の迎え角により変化します。

そのため、状況に応じて主翼の迎え角(機首上げ角)を調整します。

但し、機首上げ角が僅かでも増えると、抗力がグンと増えてしまいます。

そのため、旅客機設計の際には先ず巡航速度をどの程度にするか決め、

巡航速度付近で飛んでいる時に、最も燃費効率がいい感じな姿勢になるようにしています。

そのおかげで巡航時、おおよそ1.5~3°程度の範囲内で機首上げすれば済むようになっています。

先程、2乗の法則を持ち出して、「速度を3割落とすと燃料半分で済む」と書きました。

では巡航時、メーカーの定めた巡航速度よりも速度を3割落とすとどうなるでしょう?

速度が落ちた分揚力が減少しますから、それを補うため、機首上げ角を増やしてやる必要があります。

そうすると抗力がグンと増えてしまい、エンジン出力を余計に増やさないといけなくなりますから、

「燃料半分」どころか、燃費は却って悪化します。

短距離路線を飛ぶ時は巡航速度を3割落として、長距離路線飛ぶ時は標準の巡航速度で行こう。

なんて器用なマネは出来ません。

車やバイクとは違うんですね。

そんな訳で、巡航速度を3割落として燃料半分の飛行をしようと思ったら、

最初から巡航速度を3割落とした設計の飛行機を造る必要があります。


巡航速度を落とせない大人の事情

ここまでは物理的な観点で「巡航速度落とすとこんなに燃料節約できますよ」と書きましたが、

実は巡航速度を落として燃料を節約する方法は、航空会社にとって必ずしもプラスぱかりとは限りません。

現在は巡航速度の僅かな増減により消費燃料量がどう変化するのか、簡単にわかるようになっています。

理想的な巡航速度で飛べば、当然燃料費を低く抑えられるのですが、

飛行時間が延びれば、人件費、機材費、整備費、保険料等のコストが増えます。

前述の通り、飛行機の設計に当たって先ずは巡航速度を設定し、それに従って機体をデザインするのですが、

メーカーの設定した巡航速度は飽くまでおおよその目安であり、

その時の気象環境、重量等により、理想的な巡航速度は刻々変化します。

詳しい説明は省きますが、「理想的な巡航速度」を1%程度外しても、燃費はそう大きくは変化しません。

そのため、燃料費が多少増えてしまうのを承知の上で、敢えて速度を僅かに上げ、

トータルの運航コストを抑える等、

全体の兼ね合いを見ながら速度を決めるのだそうです。

いろいろ考えてるんですね(詳しくは【コスト・インデックス】【経済巡航】でググってみてください)。


また、他社と競合する路線の場合、

飛行時間の長い短いが集客に大きく影響するかもしれません。

巡航速度をどの程度に設定するのかについてパイロットの手記でよく目にするのは、

「競合路線を飛ぶ他社より遅くては意味がない。そこで速度をちょいと上げ~」

的な言葉です。

「A社よりB社のが速いから」とお客が競合他社に流れたら元も子もないですからね。


現在は様々な条件から、こんなに繊細な速度の増減をしているのですが、

この記事でオイラが考えているのは、数十%一気に落とす話です。

分かり易いところでは例えば、巡航速度をガクッと落したとすると、

飛行機の回転が悪くなってしまい(これまで1日に3往復できていたのが2往復に減るとか)、

1日で運べる乗客、貨物がガクッと減ってしまいます。

これまでのペイロード量を維持するには、旅客機を増やして対応しなければならず、

そうなると整備費用が増えますし、ヒコーキを飛ばすパイロットやCAさんだって増やす必要があります。


また、速度を落とすことによる燃料代の節約効果が、航空会社にとっては微妙というのもあります。

前述の通り、巡航速度を3割落とすと消費燃料は少なくとも3割~5割程度減らせるはず。

運行費に占める燃料費は、オイラが調べた範囲では、20%台~30%台でした。

現在の世界情勢からすると、燃料費の割合は以前より相当高くなっているはずですが、

ここでは仮に35%とします。

で、この35%の燃料費が3割~5割程度減ったとすると、

運航費全体では、10%~17%の減少となります。

「速いは正義」が大勢の現状では特に長距離路線の場合、

「他社さんと比べて飛行時間が長いですけど、その分お安くしますから~」

という売り方をしないと、お客も集まらないんじゃないでしょうか。

要するに、速度を落として燃料費を節約する方法は、浮いた分の燃料費を航空会社の丸儲けにし難いどころか、

集客にどんな影響があるのかギャンブルです。

それに加えて、先程の人件費、機材費、整備費、保険料等のコストは増えます。


燃料を持続可能なものにしたり、不思議な形の飛行機を造ろうとしたり、

二酸化炭素の排出を減らすため、様々な取り組みはあるものの、

「速度を大幅に落とす」という安易な方法について(意識高い欧州でさえ)、とんとお目にかからないのは、

恐らくこうした諸々の事情があるからなんじゃないでしょうか。


このように、巡航速度をどの程度に設定するか、ひいては機材の選定に至るまで、

「航空会社にとってのトータルコスト」が重要な価値観になっているのですが、

欧州を中心にほんの数年で航空会社を取り巻く価値観は激変しました。

このシリーズの3 で触れましたが、政府が短距離路線の運航を許さず、

ヒコーキならほんの1時間35分~1時間50分程度の移動に、

16~17時間もかかる列車移動を厭わない乗客の急増。

全ては、「飛行機は大量の二酸化炭素を排出する(と環境団体に見なされている)」のが原因です。

「安易な飛行機の利用を許さない」という風潮は、今後も世界中に広まっていくと思います。

「巡航速度を大幅に落としたヒコーキ」は、航空会社にとって金銭的なメリットはあまりないのですが、

二酸化炭素の排出は大幅に減らせます。


移動時間はなるべく短い方が良い。
少しでも早く目的地に着きたい。

というのは、時代を問わず誰にとっても正直な気持ちと思います(一部の特殊な人たちを除く)。

オイラとしましては、超音速旅客機が飛び回る世界を諦めてません。

但しそれは、今後技術が進み、後ろめたさを感じない程度の性能が実現できなければ、もう許されないでしょう。

それが実現するまでの間は、「ゆっくり飛ぶヒコーキ」という選択肢があってもいいのではないかと思います。


(もう続かない)

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岐阜県・各務原中飛行場跡地 [├国内の空港、飛行場]

   (未訪問)  



2.png
1934年(昭和9年)6月調査資料添付地図
1.png
「陸軍航空本部補給部各務ヶ原支部飛行場(昭和9年4月撮影)高度500米 方位N 距離1,300米
9.png
飛行場情報 Translation No. 29, 20 February 1945, Airways data: Chubu Chiho. Report No. 3-d(27), USSBS Index Section 6 (国立国会図書館ウェブサイトから転載。上3枚とも)


岐阜県各務原市にあった陸軍の「各務原中飛行場」。

グーグルマップをご覧の通りで、現在の岐阜基地の滑走路の東側に位置していました。

上に貼った昭和9年4月撮影の写真の通りで、同年アジ歴の資料では、「陸軍航空本部補給部各務ヶ原支部飛行場」

と記されています。

また同資料によれば、飛行場は2,000mx300~700mの不定形であり、

その範囲内にグーグルマップの作図の通り1,300mx250mの着陸場が設けられていました。


■防衛研究所収蔵資料「陸空-本土防空-48飛行場記録 内地(千島.樺太.北海道.朝鮮.台湾を含む) 昭19.4.20第1航空軍司令部」

に 1/25,000 各務原中飛行場がありました。

ここでも東西2,000mの飛行場内に、両端にターニングパッドが設けられた滑走路が描かれています。

(上の作図よりもっと滑走路滑走路してる)

位置
 岐阜縣稲葉郡蘇原村
積量
 約八三七,八七〇平方米
地表並周囲状況
 概して中央部は東西に高く南北に勾配ありて平坦にして
 芝及び笹混生しあるも近時稍に剥脱せる個所あり
 岐阜飛行学校第九九部隊及山に挟まれ東西に延び南北
 は極めて狭少なり
天候気象の交感
 恒風は西なるも自八月下旬至九月上旬は東南に変ずることあり
 雨季及び冬季は泥濘化し支障を来すこと屡なり
 離着陸に注意を要す
格納施設
 二〇〇〇平方米 四棟(内三棟は使用しあらず)
 一〇五〇平方米 一棟
居住施設
 見習工員収容所として約二〇〇〇名使用しあり
 給興の施設完備す
交通連絡の状況
 省線高山線名鉄各務原線及中仙道に依り岐阜、名古屋に
 通ず 至便なるも名鉄各務原線の輸送能力は飽和状態
 なり
其の他
 一、雨期及解氷期は地盤不良多く極めて困難なるを以て舗
   装滑走路を速く施設せられ度




     岐阜県・各務原中飛行場跡地         
各務原中飛行場 データ
設置管理者:日本陸軍
種 別:陸上飛行場
所在地:岐阜縣稲葉郡蘇原村(現・各務原市那加官有地無番地)
座 標:35°23'40.1"N 136°52'44.8"E
標 高:40m
面 積:83.8ha
飛行場:2,000mx300~700m(不定形)
着陸場:1,300mx250m
方 位:10/28
(座標、方位はグーグルアースから。標高、飛行場、着陸場長さはアジ歴資料から。所在地、面積は防衛研究所資料から)

関連サイト:
ブログ内関連記事       

この記事の資料:
防衛研究所収蔵資料「陸空-本土防空-48飛行場記録 内地(千島.樺太.北海道.朝鮮.台湾を含む) 昭19.4.20第1航空軍司令部」


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スペースジェット開発中止・3 [├雑談]



飛び恥

「環境負荷の大きい飛行機の利用は恥ずべきことだ」
「短距離の移動は飛行機ではなく列車の利用を促進すべし」

数年前から耳にするようになった「飛び恥」。

オイラは、「一時期グ〇ダさんがギャーギャー騒いでたけど、一般的にはまだ標語レベルっしょ」と思ってました。

ところがです。


フランス政府は、国民から150人を選出して「気候市民会議」を発足。

「気候市民会議」は気候変動対策として149の施策を政府に提案。

その提案の中に、「列車を利用して4時間以内で移動できる短距離区間での航空路線の運航は禁止する」

というものが含まれていました(@Д@)

この提言を受けたフランス政府は「4時間以内」→「2時間半以内」に修正、経由便の部分を追加し、

「列車を利用して2時間半以内で移動ができる短距離区間での航空路線の運航は、経由便など一部を除いて禁止する」

として、2021年8月フランス環境法成立。

こうして、2時間半以内に列車移動できる航空路線は、フランス国内では原則禁止となりました。

フランスの運輸相は「フランスがこの分野の先駆者であることを誇りに思う」とご満悦。

当然これには航空業界が猛反発。

欧州委に提訴したんですが、

欧州委は2022年12月、パリ・オルリ空港とナント、リヨン、ボルドー、

それからリヨン空港とマルセイユの運航を禁止するフランスの措置を承認しました(上のマップ)。

フランス政府は、今回承認を受けた路線について、3年後に「成功」と判断されれば、

さらに多くの短距離路線をビシバシ廃止する方針とのことです。

そしてこの「脱・短距離航空路線」の動きはフランスのみならず、欧州全体に広がりを見せています。

例えば、




ストックホルム~ベルリン間には航空路線があります。

飛行時間は1時間35分~1時間50分程度。

料金は10,000円~16,000円くらい(2023年3月時点)。

同区間には夜行列車の運行があります 

運行スケジュール:
ストックホルム中央駅 16:23発→ベルリン中央駅 8:47着 (所要時間:16時間24分)
ベルリン中央駅 20:57発→ストックホルム中央駅 14:10着 (所要時間:17時間13分)
3月~11月初旬まで、土曜以外の毎日運行

料金は、
スタンダードシート:約7,000円~
リクライニングシート:10,600円~

となっています(2023年3月時点。寝台もあるけどよく分かんない)。

実は昨今の「飛び恥」の影響から、この夜行列車の乗客数はこれまでの6倍に跳ね上がっており、

急増する需要に対応するため、供給を増やす計画なのだそうです。

同区間の飛行機も夜行列車も、チケットの買い方、買う時期により金額が変わるので、

どっちが高いのか安いのか、単純な比較は難しいんですが、2023年3月時点で調べた限りでは、

列車だと座りっぱでもヒコーキより「そこそこ」安い程度。

確実に車内で二食ですし、流れゆく夜景を眺めていたら、いつの間にかお酒だって飲んじゃうかもしれません。

寝台を利用したら、チケット代だけでヒコーキと同等かそれ以上になるんじゃないでしょうか。

オイラは一応航空ファンの端くれなんですが、己の趣味は置いといたとしても、

座りっぱで16時間はちょっと耐えられるか心配です(主に体力的に)。

ヒコーキならたった1時間35分~1時間50分で行けるのに、「地球環境のために」という意識から、

16~17時間もかかり、料金的なメリットも(それほど)ない夜行列車を選ぶって、凄くないですか?


Googleで【〇〇空港_××空港】と検索すると、トップに各便の情報が並びます。

「フライトを表示→」で更に詳しく見ると、

各便ごとに排出する二酸化炭素の重さ、その便が排出する二酸化炭素が多いとか少ないとか、

パーセンテージも表示されます。

この表示は欧州路線でも日本の国内線でも同様なんですが、

きっと環境意識の高い欧州では、飛行機を利用するにしても、チケット代や時間だけでなく、

「二酸化炭素排出量」もどの航空会社の便を利用するかの重要な要素になっているんでしょうね。

こうした「地球環境のために飛行機止めて列車を使おう」という動きは他にも多々あり、

手ごたえを掴んだ欧州では、短距離航空路線を廃止するために新たな高速鉄道路線の整備を進めています。

という訳で「飛び恥」、標語レベルどころか、既に航空路線を駆逐し始めてました(XДX)


フランスの消費者団体によれば、飛行機は電車と比較して乗客1人当たり平均で77倍のCO₂を排出している。

としています。

ヒコーキは離陸、上昇時にもの凄い燃料を喰い、その分二酸化炭素を排出しますから、

短距離路線はかなり効率悪いです(東京~大阪だと水平飛行時間は5分~10分程度らしい)。

成層圏に二酸化炭素を排出するのも非常によろしくないらしいです。

ですので、「長距離の移動まで列車だと時間がかかり過ぎて厳しい」という面だけでなく、

環境面からも、短距離航空路線に狙いを定めて「廃止すべし」という動きになっているのは、

妥当な考えと思います。


一方、

「世界規模で見ると、人間の排出するCO₂のうち、航空機が占めるのはたった2%に過ぎない。

その中の短距離路線だけ廃止したところで、効果はほとんどない」

というのが航空業界側の言い分です。

「全体から見れば大したことない」というこの論法、

「小さなことからコツコツと」
「出来ることから始めよう」

を信条とする環境意識の高い方々の琴線に触れることはないでしょう。

二酸化炭素削減について、「どこから削減しようか」となった時、

飛行機が真っ先にやり玉にあがってしまうのは、仕方のないことだと思います。


もちろん航空業界だってただ手をこまねいている訳ではありません。

目立つ所では、持続可能な航空燃料(SAF)の導入、燃費2割向上を目指す全翼機の開発計画等ありますが、

SAFは従来の燃料と比較して非常に高価(2~10倍)、原料調達で既に争奪戦になる等問題山積です。


(続きます)


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埼玉県・風船爆弾工場跡 [├場所]

   2022年3月訪問  



7.png
撮影年月日1947/02/08(昭22)(USA M28 113) 
出典:国土地理院ウェブサイト(地理院データを加工して作成)

埼玉県越生(おごせ)町にあった「風船爆弾工場」。

県道30号飯能寄居線からちょっと入った所にありました。

明治大学平和教育登戸研究所資料館(下記リンク参照)に、詳しい資料がありました。

「仕様書 工程表等準備ノート」に風船爆弾製造に至る協力関係が記されていて、

東京方面では、以下「在東協力工場」が並んでいます。

東京人□□草及芋蒟蒻組合
福島縣東北地方(蒟蒻組合)
栃木縣手漉紙(烏山)
長野縣御子柴基地
石川縣手漉工組合

(長野以外は)「蒟蒻」、「手漉」とあります。

元々こうしたものを生産している地域が風船爆弾用の和紙、蒟蒻(糊?)の製造協力工場とされたようですね。

そして、これら協力工場から一旦「田端化工紙工場」に集約され、

それから日比谷第一、日比谷第二、越生の三ヶ所へ送られ、「完成」と記されています。

日比谷第一と第二で一日十二球、越生は一日二球とも記されており、

「ここから越生は東京方面の主要な風船爆弾製造工場だったことがうかがえる。」

とありました。


ちょっと脱線しますが、同じ埼玉県には1,300年の歴史を有する「小川和紙」の産地小川町があり、

地元ではこの小川和紙も風船爆弾の開発段階から深いかかわりをもっていたとされています。

この「小川和紙」の産地は、越生の工場跡から北僅か約10kmにあるため、

オイラはこれまで「越生の風船爆弾工場」とは、

和紙産地である小川町で製造された和紙を切ったり貼ったりする程度だと思っていたんですが、

上述の資料には、越生は「主要な風船爆弾製造工場」とあります。

風船爆弾は偏西風に乗せて米国に飛ばすのですが、偏西風が強いのは冬季に限られるため、

昭和20年4月をもって放球は中止となりました。

ところが同サイト様によれば、

大津基地の倉庫にはまだ多量の風船爆弾が残っていたこと、

特に小川町では風船爆弾用和紙「生紙(きがみ)」用の原料である楮が昭和20年4月、5月も配給されていること、

登戸研究所庶務将校の大尉が昭和20年8月2日に越生に向おうとしたとする日誌が残されていること等から、

8月で終戦とならなければ風船爆弾の放球は同年秋から再開されていた可能性があったとしています。


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赤マーカー地点。

町営住宅の一角にある碑と銘板。

碑:「フーセン爆弾工場跡 乾繭所の広間が昭和二十年風船爆弾工場となり、和紙の巨大風船を製造。」


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「乾繭所」
 昭和12年(1937)の「支那事変」勃発後、軍需工場として戦地向けの乾燥野菜の製造も行われていた。
戦後は稚繭共同飼育所になり、昭和25年には学校組合立埼玉県坂戸高等学校越生分校が置かれた。昭和28
年に埼玉県立飯能高等学校越生分校となり、昭和45年まで校舎として使用されていた。
 
 風船爆弾工場
 風船爆弾(気球爆弾)は、太平洋戦争中に日本陸軍が「ふ号兵器」の名称で密かに開発した兵器である。水素を充填した気球に爆弾を搭載し、ジェット気流に乗せてアメリカ本土を空爆するもので、昭和十九年(一九四四)に実用化された。翌春までに九千三百発が福島県、茨城県、千葉県の海岸から放たれ、太平洋を横断して推定約千発が到達した。
 十五キロ爆弾一発と五キロ焼夷弾二発を吊るす直径十メートルの気球は、和紙を蒟蒻糊で貼り合わせて作られた。楮を原料とする薄くて丈夫な細川紙から「気球紙」が開発され、産地の小川町、東秩父村とその周辺で生産が始まり、全国の和紙生産地に拡大された。
 越生町でも生繭の共同乾燥施設である乾繭所の施設を利用して、兵器製造会社の中外化工品(ちゅうがいかこうひん)越生作業所が製造に当っていた。
 平成二十七年三月 越生町教育委員会  



     埼玉県・風船爆弾工場跡         
埼玉県・風船爆弾工場跡 データ
所在地:埼玉県入間郡越生町黒岩68

沿革
1945年 乾繭所の広間が風船爆弾工場となる

関連サイト:
越生町/風船爆弾工場跡 
明治大学平和教育登戸研究所資料館 
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