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長崎県・針尾送信所跡

   2024年5月訪問  



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撮影年月日1962/05/21(昭37)(MKU627X C7 3) 
出典:国土地理院ウェブサイト(地理院データを加工して作成)

長崎県佐世保市針尾中町にあった「針尾送信所」。

※当記事は現地の説明版を参照させて頂きました。

針尾送信所の無線塔は、電波を発信するアンテナを支える主塔として建てられたもので、

高さ450フィート(137.16m)の鉄筋コンクリート造3基から構成されています。

各無線塔は、1000尺(303.03m)の正三角形に配置されており、

一、二号塔は大正7(1918)年10月、三号塔は大正8(1919)年12月から工事が始められ、

一号塔から順に大正11(1922)年4、5、7月に完成しました。

工事費は93万6,822円で、設計・監督は佐世保鎮守府建築科技師の吉田直氏によるものです。

これは1基当たり約50億円に相当するのだそうです。


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三号無線塔。

頂部 外径:10フィート(3.048m) 厚さ:9インチ(22.86cm)
底部 外径:40フィート(12.19m) 厚さ:30インチ(76.2cm)

鉄筋コンクリート技術は1890年代にフランスで発明され、1895年頃日本に導入。

当時の海軍は、佐世保市をコンクリート建造物の「実験と実践の場」として考えていたようで、

当無線塔建設にもこの技術が採用されました。


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実際の建設の際、塩分の少ない川砂や砂利を布でふいて使い、時間をかけた丁寧な施行が行われました。

塔の表面は、建設後100年を経ても型枠の跡が鮮明に残り、顕著な劣化が見られないほどです。

このことは、鉄筋コンクリート技術が国内に導入されてから僅か20余年でこの品質を実現したということであり、

高品質の鉄筋コンクリートの構造物として残されてきた貴重な構造物となっています。


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三号無線塔入口


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アンテナケーブルの振動を吸収する重錘(防振装置)やケーブルの維持管理用のウインチが残されています。


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基礎部 直径:80フィート(24.38m) 厚さ:3フィート(91,5cm)


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頂上に一辺18m正三角形、重さ9トンの簪が設置されています。


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電信室

一辺300mの正三角形に配置された無線塔の中心に建設されました。

「ニイタカヤマノボレ」はここから送信したとの説がありますが、

現在までのところ、そのことに関する史料は見つかっていません。


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1997年まで海上保安庁が使用していたのだそうです。


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アーチ状の屋根構造になっていますが、

この上に大量の砂と土砂を乗せて、爆発の衝撃を吸収する耐爆構造なのだそうです。


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一号無線塔(上2枚とも)

コンクリートの打設作業は1回につき、4フィート6インチ(1.3717m)で進められ、

100回目で450フィート(137.16m)に達する計算で建設されたのだそうです。
 

2022年12月、市文化財課は送信所の長期保存に向け、劣化状況や耐震性を検証する調査を始めました。

(以下リンク先2つの記事から)

長崎新聞/なぜ倒れない? 136メートルの無線塔 佐世保の針尾送信所 建設100年、基礎の仕組みが判明2023/09/02 
NHK/旧日本軍「針尾送信所」の「無線塔」基礎部分を特別公開2023/9/4(動画あり) 

この調査は、一号無線塔の基礎部を直接確認するため、深さ6mの掘削を含むものでした。

その結果、地中に埋まる基礎部は"皿をひっくり返したような形"になっていて、

深さ6m、地表部分直径12m、底部分直径24の鉄筋コンクリート製。

基礎の下は凝灰岩と呼ばれる岩盤で、これは「九州で一、二を争うほど」の強度であり、

この強度に優れた岩盤だったからこそ、この場所が選ばれたと考えられるのだそうです。

この岩盤を手作業で平たんにし、更に薄いコンクリートで水平にし、

その上に"皿をひっくり返したような形"の基礎を乗せて土を盛り、

その圧力で現状を保っていることが判明したのだそうです。

強度の優れた岩盤の上にこうした構造の基礎が築かれたため、

100年経ってもびくともしない状態を保っているのだそうです。

佐世保市文化財課の方はインタビューで、

高さ137.16mの巨大な無線塔と比較すると、僅か6mの基礎部はかなりきゃしゃな感じだが、

100年前の技術者たちが「このきゃしゃな基礎でいいんだ」と計算して作っている。

今後100年、200年後の人たちにどう残し続けるのか、

調査でわかった成果をもとに工事・修理をしていきたい。

という内容を語っておられました。




     長崎県・針尾送信所跡         
針尾送信所 データ
設置管理者:海軍
所在地:長崎県佐世保市針尾中町
座 標:33°04'00.8"N 129°45'05.2"E
標 高:54m
(座標、標高はグーグルアースから)

沿革
1918年10月 1,2号塔工事開始
1919年12月 3号塔工事開始
1921年   事務所、兵舎建設
1922年04月 1号塔完成
    05月 2号塔完成
    07月 3号塔完成
    11月 竣工、開局
1948年 佐世保海上保安部針尾送信分室開設。海軍施設を引き継いで使用
1954年 海上自衛隊発足。施設を共同使用
1975年 無線塔頂部の簪(空中線支持構造物)撤去
1997年 海上保安庁の無線施設更新。役目を終える
2009年 市、基礎の形や地中の土を調べるためボーリング調査
2013年03月 6日 国重要文化財指定
2022年 12月 市、基礎部掘削調査
2023年 9月 掘削した基礎部分の特別公開実施。その後埋め戻し

関連サイト:
ながさき旅ネット/針尾送信所 針尾無線塔 
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この記事の資料:
現地の説明版


コメント(10) 
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コメント 10

miffy

遠目には何度も見てますが針尾送信所って中も見る事ができるのですね。

by miffy (2024-08-05 17:21) 

an-kazu

近づけるどころか、内部が見られるのが凄いですね〜

by an-kazu (2024-08-05 21:41) 

とり

■miffyさん
「何度も」見られてるんですね。
いいですね~。
オイラも中が見られるとは思ってませんでした。

by とり (2024-08-06 18:58) 

とり

■an-kazuさん
オイラも、せいぜいフェンス越しに眺める程度かしらん。
と思ってました。

by とり (2024-08-06 18:59) 

鹿児島のこういち

「この岩盤を手作業で平たんにし、」つまりタガネやセットハンマーなどで岩を斫って
 「更に薄いコンクリートで水平にし、」捨てコンを打設してレベルをとり
 「その上に"皿をひっくり返したような形"の基礎を乗せて」籠鉄筋を組んだって事でしょうか。

当時の鉄筋ならば今の異形棒鋼ではなく丸鋼でしょう、型枠を固めるのもセパではなく番線でしょうけど、壁を接写した写真がほしかったなぁ(;^ω^)もしかしたら、実験のような施工だったら、全く違う方法をつかっていたかも。
気になるから、長崎に遊びに行く時には寄ってみたいと思います(≧▽≦)
by 鹿児島のこういち (2024-08-08 23:22) 

とり

■鹿児島のこういちさん
接写してませんでした。
お役に立てず申し訳ないですm(_ _)m
機会がありましたら、是非プロの目で!!

by とり (2024-08-09 07:12) 

鹿児島のこういち

実は、ここのすぐそばで特別養護老人ホームを造ってたんですね。
その時は、なんだかな?煙突かなぁ?って感じで遠くから眺めてました(≧▽≦)
針尾島の「民宿やまべ」で1年ほどお世話になりました。
by 鹿児島のこういち (2024-08-09 22:35) 

とり

■鹿児島のこういちさん
お住いの地域では地震は大丈夫だったでしょうか?

「民宿やまべ」の近くからストリートビュー見てみました。
三本キレイに眺められますね!!
まあこの距離だと煙突に見えなくもないか。
市の担当の方は、6mの基礎を「きゃしゃ」と称していますが、
相場が分からないオイラは正直ピンときてません。
136m鉄筋コンクリート製の塔の基礎は、
ざっくりどの程度になるものなのでしょうか?

by とり (2024-08-10 04:10) 

鹿児島のこういち

今日は仕事お休みです(≧▽≦)
うちの家が建ってる所は岩山で、鹿児島特有のシラス台地ではないので
揺れはほとんどなかったみたいです。下の子が仕事から帰ってきていて
メダカの水槽の水が、少し揺れたかなって感じだったと言ってました。
自分は車運転していて、携帯の警報と電線が揺れてるなくらいでした。
上の子の職場はそうとう揺れたらしい(*´▽`*)問題はなかったとは
言ってたけど。自分が勤めてる職場は7台あるエレベーターのうち4台が
自動停止したらしいけど、自動復旧したみたい。震度4くらいでは
ないでしょうか。

さて基礎ですが、自分も塔は経験が携帯電話の無線基地局しかなく
鉄筋コンクリート造の塔構造の基礎知識になりますが・・・
針尾送信基地は岩の上に建っているので、まず基礎杭はいらないです。
深さですが、GL(地盤面)から上のH(高さ)の1/10以上が基礎の深さ
または、4m以上。
136mだと13.6m以上。ただしHが20mであったとしても基礎は4m以上
となります。
当時は現在の建築基準法ではないでしょうから、写真を見たかんじ
深さも底版から籠鉄筋に人が立ってるのを順にみていくと、約10m
くらいではないでしょうか?
地震や台風などで起きる回転モーメント(曲げようとする力)に耐えら
れるのか心配ですよね。
ただ、ここ針尾は地盤を掘削すると転石だらけなんですよ。
重機で掘削も大変。これを埋め戻しに使えば結構頑丈になるのかも
しれないです。
あと基礎下が岩というのも強みですよね。

by 鹿児島のこういち (2024-08-10 08:49) 

とり

■鹿児島のこういちさん
お住まいの地域は特に被害なかったようですね。
但し今回は震源地が震源地だけに、
まだまだ気掛かりですね。
お子さん、もうお二人とも社会人ですか!
鴨池空港跡の「流水階段」のお写真が懐かしい。。。
月日が経つのは本当に早いですね。

それから、専門的な話を分かり易くありがとうございました。
通常なら13.6m以上のところ、その半分以下ですから、
「きゃしゃ」と表現する訳ですね。
確立間もない技術でしょうに、
そこまで読み切った100年前の技術者たちにリスペクトです。

by とり (2024-08-10 10:10) 

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