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千島・択捉島紗那不時着場跡地 [├国内の空港、飛行場]

   2020/12更新(未訪問)  




択捉島紗那(しゃな)村にあった日本軍の「択捉島沙那不時着場」。

■防衛研究所収蔵資料「陸空-本土周辺-16飛行場記録(千島の部)第1復員局」の中に、

「択捉島沙那不時着場」図があり、上のグーグルマップはこの図から作図しました。

後述しますが、当不時着場の位置情報として、

紗那村東方約五〇〇米 
紗那沼西南方約四〇〇米
紗那川と紗那沼川の交流点付近を起点とする東方約六〇〇米四〇米の東西に亙る一方向

という非常に詳細な記述がありました。

他もこの位詳細な情報があると助かるんですが…。

余談ですが、当不時着場のすぐ上にある紗那沼は、リンドバーグが極東航路開設の途中で着水した場所でもあります。

地割が見当たらないため、「情報からするとおおよそこの辺り」という位置決めをしております。

情報によりますと、不時着陸場は「東西方向」とあるのですが、

図はきちんとノースアップであることを明示した上で、正確に東西方向ではなく、やや斜めになっています。

それで図と同じ角度で斜めに作図しました。

また、図には不時着場に 600mx40m と記入があり、

斜めになっている不時着場と同じ角度の矢印で恒風の方向が示されています。

同資料にある情報を以下引用させていただきます。


択捉島沙那不時着場
判決
一、紗那村東方約五〇〇米紗那沼西南方約四〇〇米紗那川と
  紗那沼川の交流点付近を起点とする東方約六〇〇米四〇
  米の東西に亙る一方向を概ね不時着陸場として使用し得べし
  然れども此の地積は放牧場として牧柵散在しあるを以て
  之を除去するに非らざれば着陸危険なり、牧場は総て民有地
  なり
二、恒風は四季を通じ概ね東西の二方向にして風速は中部千島に比
  し少なるものの如し
三、牧柵のため現在の儘にては決死的に非らざれば不時着と
  雖も着陸不可なり

港湾及上陸點
一、択捉島西海岸紗那港又は有明港とす 然れども両港共に遠
  浅なれば五〇屯級の漁船と雖も接岸することを得ず
  艀舟又は「ボート」に據らざるべからず
二、上陸点資材集積場は相当大なる地積を有す
  
土質
黒褐色にして堅硬なり熊笹小牧草繁茂の現況にて差支えなし

滑走地区
 広袤及形状
  東西に亙る六〇〇米x四〇米の一方向のみとす
 恒風
  西風又は東風

 地表面の状態
  高さ四〇糎以下の熊笹及牧草なり
 将来の拡張能否
  なし
 使用上の注意
  牧柵散在し且山岳四周にあり
 其の他
  紗那沼及東方に至るに従い森林地帯となり高き針葉樹あり特に西
  方紗那村内には無線電柱(高さ約八〇米)二本直立しあり

周囲の状況
 飲料水及雑用水の状況
  紗那川又は処々に湧水ありて水質良好にして飲料雑用共に
  豊富なり

気象
 晴雨日数
  快晴僅かに一年を通じて七日にして其の他の大部分曇天なり
  曇天と雖も一ヶ月概ね十日青空を望み得
 降水量
  0.1m/m以上一ヶ月平均十七日10m/m以上一ヶ月平均十三日なり
 気温
  最高+24.3℃ 最低-18℃なり
 積雪量 霧及煙霧
  一、二、三月最も多く粉雪にして最大積雪量約四二糎なり
  六、七月最も多く一、二、三、一〇、一一、十二月は殆どなし

其の他
一、飛行場として眞價なきものと認む
二、常住人ありて択捉島中最大の村落なり
三、紗那村別飛村道中間南方には相当広大なる平坦地(二〇〇米x一〇〇〇
  米)あるも人跡未踏にして「エゾ」松密生し天然の大森林なり


■防衛研究所収蔵資料「陸空-本土防空-48飛行場記録 内地(千島.樺太.北海道.朝鮮.台湾を含む) 昭19.4.20第1航空軍司令部」

にも同じ要図と、ほぼ同じ情報がありました。

資料では「択捉島紗那不時着場」と表記されているんですが、

情報を見ると、牧柵があちこちにあって、着陸は決死的であり、

「飛行場としての価値なし」とバッサリ!Σ(゚Д゚;)

この資料は終戦より少し前の情報を纏めたものみたいなんですが、

情報を見る限りこの時点では、不時着陸場として実際に使用するという段階ではなく、

候補地レベルな感じに見えます。

当不時着場はネットでも情報がないため、当不時着陸場が結局そのまま使われないまま終戦を迎えたのか、

民有地の地権者と交渉してきちんと不時着陸場として整備したのか不明です。



     千島・択捉島紗那不時着場跡地         
択捉島紗那不時着場 データ
設置管理者:日本軍
種 別:不時着陸場
所在地:択捉島紗那村東方
座 標:45°13'34.3"N 147°53'39.4"E
標 高:6m
着陸帯:600mx40m
方 位:11/29
(座標、標高はグーグルアースから、滑走路長さは資料から、方位は地理院から)

関連サイト: 
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この記事の資料:
防衛研究所収蔵資料「陸空-本土周辺-16飛行場記録(千島の部)第1復員局」
防衛研究所収蔵資料「陸空-本土防空-48飛行場記録 内地(千島.樺太.北海道.朝鮮.台湾を含む) 昭19.4.20第1航空軍司令部」


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