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787運行停止・その2 [├雑談]

787のトラブル関連をまとめてみました。 

 

2011年

9月 デリバリー開始

11月 定期便運航開始

6日 羽田発岡山行きのANA機、「メインギアが出ていない」旨のエラーメッセージが出たため、手動で主脚を出し着陸

 

2012年

2月29日 ANA機、山口宇部空港に着陸後電気系統に不具合が見つかり欠航

9月5日 岡山発羽田行のANA機、左エンジン油圧系統のトラブルによりエンジンから煙が出たため欠航

10月23日 山口宇部空港で地上走行中の羽田行きANA機、燃料漏れ

12月 ユナイテッド機、電気関連の故障

 

2013年

1月
8日 ボストン・ローガン国際空港で駐機中のJAL機APUバッテリーから出火

9日 ボストン・ローガン国際空港で地上走行中のJAL機主翼から燃料漏れ。主翼左側の弁から燃料約150L漏出

9日 羽田発山口宇部行きのANA機で左の主脚タイヤ4個のうち2個のブレーキが作動しないトラブル

11日 羽田発松山行きのANA機で操縦席窓にひび

11日 宮崎空港で離陸前点検中のANA機左エンジンからオイル漏れ

13日 ボストンの空港で燃料漏れを起こしたJAL機が成田空港で整備作業中に燃料漏れ。燃料放出用バルブから約100L漏出

16日 山口宇部発羽田行きのANA機、飛行中煙が充満し異臭がしたため高松空港に緊急着陸(メインバッテリートラブル)

16日 JALとANAは自主的に運航停止を決定

16日 FAA、緊急耐空性改善命令。787運行停止。 同様の措置は1979年アメリカン航空のDC10がエンジン脱落で墜落、273人が死亡して以来34年ぶり

17日 国土交通省「耐空性改善通報」。国内航空各社に対し、バッテリーの安全性が確認できるまで787の運航停止を指示

18日 ボーイング、787の納入を一時停止と発表。生産は続行

21日 国土交通省と米連邦航空局(FAA)、GSユアサ本社に立ち入り検査

24日 米国家運輸安全委員会(NTSB)、1月8日のボストン・ローガン国際空港でのバッテリー火災について、損傷を受けたバッテリー内部や後部電気室の写真公表。「あらゆる潜在的要因を排除していない」と述べる。NTSBの調査チームはこれまでに、リチウムイオン電池の充電装置(BCU)や始動動力装置(SPU)を製造した英メギット傘下のセキュラプレーン・テクノロジー、APUのコントローラーを製造したユナイテッド・テクノロジー・エアロスペース・システムズ、ボーイング、日本ではバッテリーのモニタリング装置(BMU)を製造した関東航空計器で調査を実施

28日 GSユアサ本社立ち入り検査終了。国交省航空局「トラブルに直接つながる要因は見つかっていない」


2月
7日 ボーイング、「787型機に発生した問題の原因がバッテリー内部にあったと認識したという内容を含む米国運輸安全委員会の調査進捗報告を真摯に受け止めます」。と発表
ボーイング、FAAの承認を受け、787型5号機(ZA005)を使用してフライトテストを行うと発表
ボーイング幹部、顧客航空会社への補償問題について、787の運航再開後に顧客からのクレームに対応すると述べる 

9日 フライトテスト実施。飛行中のバッテリー作動状況のテスト

11日 フライトテスト実施。飛行中特に異常はなし。今後テスト結果を分析。現時点ではこれ以上のフライトテストの予定なし

20日 運輸安全委員会、1月16日のバッテリー火災機に関し、本来は独立しているべきメインバッテリーとAPUバッテリーが設計ミスによって回路 (ホットバッテリーバス、HBB) を経由してつながっていたと発表。ただし、HBB とメインバッテリーの間には電流の逆流を防ぐダイオード (BDM) があるため、メインバッテリーの発煙との関連性は低いとしている。フライトレコーダに記録される電圧データは HBB と BDM の間で計測しているため、計測データに影響が生じた可能性があるとしている

20日 複数の米メディアはボーイングが運航再開に向けたバッテリーの対応策を22日にもFAAに示すと報じる

20日  米紙シアトル・タイムズ(電子版)はボーイングが同社部品工場に対し、バッテリーの頑丈な格納容器の製造を指示と報じる。4月にも787の運航を再開させるための取り組みの一環。ボーイングは200個の製造を指示しており、100個は3月18日までに準備できる見通し

20日 エア・インディア、4月中旬までに787運航を再開する考え示す。同社は6機の787を保有

21日 ユナイテッド、3月31日に予定していた成田-デンバー線の開設を5月12日に延期と発表。同路線以外は6月5日まで787を運航スケジュールから外す

22日 国土交通省、燃料漏れ事故についての調査結果。ボストンのケース(1/9)では翼の中にある燃料タンクのバルブに1.5mmほどの大きさの異物が挟まっていた痕跡が見つかり、このためバルブが開いたままの状態になって燃料が漏れ出した可能性が高い

成田のケース(1/13)では別の配管のバルブの開け閉めを制御する電気モーターのスイッチに不必要な塗料が塗られたため、スイッチが切り替わらず、バルブが開いたままになっていた

更に国土交通省は今年1月に発生した3件のトラブルについて、いずれも部品の品質不良が原因との調査結果を発表。1月9日に山口宇部空港で発生したブレーキトラブルでは、制御基板に取り付けたトランジスタの破損が見つかった。トランジスタ自体か、基板の品質不良が原因とみられる
1月11日の操縦室の窓ガラスにひびが入ったトラブルについては、防水性をより向上させた機体で起きたことから、浸水などが原因ではなく、ガラスの内側に張った曇り止めフィルムの品質に問題があったとみられる
また宮崎空港で同日エンジンに付属する発電機の潤滑油が漏れたケースは、圧力調整弁に支障があり、油が不規則に流れるようになっていた。これが原因で油を冷却する「熱交換器」の管が損傷、油漏れが起きた。ANAは3月ごろ完成する新しい発電機を取り付けて改善する予定

22日 ボーイング商業機部門トップとFAA長官が会談。FAAに対して運航再開に向けた対応策を提示。リチウムイオン電池の使用は継続し、セルの間に断熱材を配置する他、煙の排出装置や延焼を防ぐ耐熱性のケースをバッテリーに装備すると見られており、パイロットが個々のバッテリーセルをモニターできるシステムを装備するかもしれない。ボーイングは早ければ4月中の運航再開を念頭に置いていると見られる

会談後、ボーイングは「問題の解決と運航再開に向け前進したことに勇気付けられた」と述べる
一方FAAは「提案を検討しており、詳細に分析する。乗客の安全が最優先課題であり、解決策がバッテリー不具合のリスクに対処したと確信できるまでは787の商用運航再開を許可しないだろう」と表明




明らかになる原因

検索できる範囲でトラブル関連を拾い出してみました。

実際はもっとあるのでしょうが、過去の小さなトラブルは件のバッテリー関連で埋め尽くされてしまっている感じです。

ここにきて非常に気になる動きが2つ。

1つ目は上にまとめた通りですが、残念ながらバッテリートラブルの原因は未だ不明のままながら、

それ以外のトラブルについて、全てではないものの次第に原因が明らかになっています。

並べてみるとこんな感じ。

 

2013年1月

9日 主翼左側の弁から燃料漏れ→燃料タンクのバルブに異物が挟まっていた痕跡

9日 主脚ブレーキトラブル→制御基板かトランジスタの品質不良

11日 操縦席窓にひび→ガラスの内側に張った曇り止めフィルムの品質不良

11日 左エンジンからオイル漏れ→圧力調整弁不良

13日 燃料放出用バルブから燃料漏れ→不必要な塗料が塗られていたため

(16日 メインバッテリー損傷機で配線の設計ミス)


16日の「メインバッテリー損傷機で配線の設計ミス」とは、バッテリー損傷の原因が設計ミスという意味ではなく、

この事故機からバッテリーがらみの設計ミスが見つかったということです。この項目だけ他と意味が異なるので()を付けました。

この16日のメインバッテリとAPUバッテリー配線の設計ミスについてですが、

実はボーイングは2011年11月の時点で既にこのミスに気付いており、図面を改訂していました。

件の機体は2011年12月製造なので、図面改定のものです。

図面を改定したにも関わらずそれが反映されずに製造/出荷してしまった事になる訳です。

航空機では図面改訂が生じた場合、飛行の安全性に影響が及ぶ際は直ちに当該箇所の改修が行われるのですが、

改訂内容が「安全性に影響しない」とメーカーが判断した場合(今回のケースはこれに当たるらしい)、

改修に時間を要することがあるのだとか。

しかし如何に安全性に影響しないとはいえ、製造から14か月経って「配線ミスが見つかった」っていう感じなのですね。

 

製造側のミス

それから9日の「バルブに異物」については、この異物がどうやって入ったか分からないのでどこに責任があるのか不明ですが、

それ以外は整備士やパイロットといった運用側の不備ではなく、いずれも製造側の不備です。

こうも様々な場所からポロポロと製造の不備が見つかると、

少し前に書いた「787運行停止」 のコメント欄で おろ・おろしさんとtooshibaさんが、 

「バッテリートラブルはボーイングによる最終組立における配線ミスの可能性が高い」

とする記事 を紹介してくださいましたが、この説がにわかに現実味を帯びてきます。

787はかなりのところまで下請けに作らせてから最終組み立て工場に運ばれてくるので

(一例として主翼を製造する三菱は主翼内部の配線配管も行う)、今回見つかったミスを実際に犯したのがボーイングなのか、

それともどこか下請けなのか、オイラには分かりません。

それでも完成した787がミスなく完璧なヒコーキに仕上がっているかどうか、最終チェックの責任はボーイングにあるはず。

ボーイングの組み立て工場での作業風景って、私服のおぢさん達がガムクチャクチャしながらなんですよね。

「リラックスして楽しげな職場でいいなぁ」と思っていたのですが、こうなるとちょっと見方が変わってしまいます。

 

運行再開の動き

そして気になる動きの2つ目は、ボーイングと一部のエアラインに運行再開の動きがあること。

2月20日のシアトル・タイムズは、「ボーイングがバッテリーの頑丈な格納容器製造。100個は3月18日までに準備できる見通し」

と報じています。

787は1機につき同じ型の主バッテリーを2つ搭載しています。

現在のデリバリー数が50機ですから、

3月18日までに「頑丈な格納容器」を100個製造→デリバリー済のエアラインに機数x2個配布→取付→4月から運行再開

という算段なのでしょう。

ボーイングは2月22日にバッテリー火災の対応策をFAAに提案しましたが、

これはバッテリーが今後二度と再び火を出さないように原因を取り除く根治療法ではなく、

未だ原因は不明で再び出火する危険はあるけれど、そうなってもそれ以上被害が広がらないようにするための姑息療法です。

 

ボーイングが運行再開を急いでいる一方で、一部のエアラインにも運行再開の動きがあります。

2月20日にエア・インディアが4月中旬までに787運航を再開する考えを示しました。

翌21日にはユナイテッドが、3月31日に予定していた成田-デンバー線の開設を5月12日に延期と発表しました。

こちらはエア・インディアと少しニュアンスが異なるのですが、

「5月12日には787を飛ばせるように、一応準備を進めますよ」という意味に取れます。

 

運航禁止令

1月16日にFAAが787の飛行禁止命令を出し、全世界の航空当局にも同様の措置を呼びかけ、

翌日国交省もこれに追従した形となりました。

そもそもFAAは米国の運輸省の一機関に過ぎず、自国の航空会社への強制力はあるのですが、他国への強制力はありません。

他国にも呼びかけを行いましたが、これはあくまで要請、お願いです。

ユナイテッドは米国の航空会社ですから、成田-デンバー線にどんなスケジュールを組もうが

FAAの許可があるまで787を飛ばせませんし、ANAとJALは国交省の許可があるまで787を飛ばすことができません。

一方、4月中旬までに運航再開を表明したエア・インディアはインドの国有会社。

メーカーのボーイング自身も4月に飛ばす気満々ですから、

インド政府以外誰も(天下のFAAでさえ)エア・インディアへの強制力を持っていません。

ここはボーイングからバッテリー容器を受け取って本当に飛ばすのかもしれません。

余談ですが、そんな訳でANAとJALに強制力を持っているのはFAAではなく国交省。

その国交省が飛行停止の指示を出す前に自主的に運航を止めたのは天晴だったと思います。

尤も、2度目のバッテリートラブル直後に運行停止を決断したため、今両社の787はいろんな空港で駐機中です。

勿論羽田と成田が多いのですが、岡山 高松、松山、熊本の他、ANAの1機がフランクフルトに、そしてJALの1機がボストンにいます。

やっぱり毎日駐機料取られてるんでしょうね。あーあ^^; 

追記:国交省の指示で駐機中の機体については、駐機料免除とすることが後日報じられました。

 

トラブルの背景

787の運行再開が1日長引けば、それだけボーイングと参画企業、航空会社は様々な損失を累積させてしまうのでしょう。

そうした事情から早期運行再開を望むのは分かるのですが。。。

ご存知の通り787はデリバリーまでに遅延に次ぐ遅延を繰り返し、それが訴訟問題にまで発展し、

製造責任者が交代を繰り返し、「1日でも早く」という内外の強い思いの中で開発が進みました。

現在も生産レートを月産5機から10機に引き上げるべく、「1機でも多く」、「1日でも早く」という状況にあります。

そして安全性に影響しないとはいえ、製造から14か月も経ってから配線ミスが見つかり、

製造上の不備が次々露わになりつつあるのが現状です。

ボーイングの社長は「安全こそ最優先」と繰り返し、

先月末辞任を表明したFAAの長官は「安全を1,000%確認できるまで飛行させない」と述べています。

安全の上にも安全を期するならば、未だ未知の不具合を幾つも内包していると見るべきでしょう。

 

ここまで散々心配事を書き連ねてきましたが、

バッテリートラブルが本当にそれ以上他に害を広げないのであれば、個人的には原因不明のまま運行再開してもいいと思ってます。

次の記事でそのことを書きます。

(続きます)


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コメント 4

こけもも:

バッテリーは日本企業が生産した部品をフランス企業が製品として組上げて(回路その他付けて)ボーイングに納入したって聞いたような・・・。これが事実ならユアサに原因があるかのような連日の報道に違和感を覚えますね。
by こけもも: (2013-02-25 15:54) 

tooshiba

>バッテリートラブルが本当にそれ以上他に害を広げないのであれば、
>個人的には原因不明のまま運行再開してもいいと思ってます。

ふむ・・・これは大胆なご説ですな。
原因不明の不具合が連鎖的に生じて、御巣鷹の悲劇のような事故に至ったら?
責められるとしたら、ボーイングよりも運航していた航空会社ではないでしょうか?
そして、それが日本航空ならどうということはない(残念とは思います)が、全日空なら私にとっても死活問題です。

実はフランスのタレス社が請け負った回路だか制御は、韓国の某L社に丸投げされたのです。
http://search.yahoo.co.jp/search?p=B787+%E3%82%BF%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%80%80LG&aq=-1&oq=&ei=UTF-8&fr=top_ga1_sa&x=wrt
そこもバッテリーの受注を狙っていたみたいですが、GSユアサが納入業者になっているということは・・・?

まあ、国内企業は検査を受けましたが「問題は見つからなかった」ということなので、恐らくは。
でも、最初は「ユアサが大失態をやらかした!」と嬉々として報道していた大新聞やテレビ各社局が、ピタッと止めましたよね。
「どうやらバッテリーや日本企業の分担した部分には過失がないっぽい」と判断して、執拗に叩いていたら、自分たちが叩かれるかも。と恐れたからだろうと思えます。
主犯は、マスコミが大好きな、韓国の企業ですからね。

でも、今までにどこの局が新聞社が、どんなふうに報じたかなんてのは。いくらでも統計データが作れますからね。
ただでさえ、変態とか○流ごり押しとか、悪評高い社局のお先は。
真っ暗です。
いや、真っ黒であるべきです。
by tooshiba (2013-02-25 21:58) 

鹿児島のこういち

不具合が早く解決されていく事を望みます!
by 鹿児島のこういち (2013-02-28 11:29) 

とり

皆様 コメント、nice! ありがとうございます。m(_ _)m

■こけもも:さん
>違和感
まったくもって同感です。
株価続落という実害もありました。
これで「完全にシロ」という結論が出たとしたら、誰がどう責任とるのでしょうか??

■tooshibaさん
この記事はオイラのブログ史上最も大胆な記事です^^;
記事書いてて思ったんですが、tooshibaさんはこういうテンションの記事を連日のように上げておられるのですよね。
それが驚異的な閲覧数とファン数に繋がっているのだと思います。
オイラにはとても真似できません。

■鹿児島のこういちさん
そうですね~。
早く原因が明らかになって欲しいです。
by とり (2013-03-02 09:09) 

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