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西郷湾の飛行場跡地 [├国内の空港、飛行場]

   2015年10月訪問 2021/12更新  

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撮影年月日 1965/08/03(昭40)(CG651X C6 9)  
出典:国土地理院ウェブサイト(地理院データを加工して作成)  

島根県隠岐郡隠岐の島町の西郷湾(と西郷港)。

昭和37年7月、日東航空が水陸両用飛行艇グラマンG-73マラードで西郷湾と宍道湖を結ぶ路線を開設しました。

情報が非常に限られているため地元に問い合わせをしたところ、隠岐の島町教育委員会様から丁寧な回答を頂きました。

隠岐の島町教育委員会様、どうもありがとうございましたm(_ _)m 

質問と頂いた回答は以下の通りです。

Q:飛行艇が離着水していた水域はどこでしょうか?
A:細かくは不明ですが、現隠岐の島町の西郷湾内に離着水していたようです

Q:乗客が乗降していた場所はどこでしょうか?
A:西郷湾内の水上にて乗降していたようです。渡船で近くまで行き乗降していたようです

Q:飛行場若しくは事務所のあった場所はどこでしょうか?
A:水上で乗り降りしていた以外は不明です

Q:飛行場の正式名称は何でしょうか?
A:不明です

湾外で離着水して湾内にザバザバとタキシングするテもあると思うのですが、「湾内で離着水していた」のですね。

他資料でもそう受け取れる記述があります。

とすると上図の通り、湾内は大きく折れ曲がっているため、2本の矢印のどちらかを使っていたのではないかと思うのですが、

2本の矢印のどちら側から離水/着水するにしても、陸地を飛び越える必要があります。

湾内はかなり急峻な地形に取り囲まれ、山がそびえており、スリリングなものだったのではないかと思います。

湾内の2本の矢印のうち、西側のものは途中で極端に幅が狭まっています。

それで個人的には、東側の矢印部分を使っていたのではないかと想像します。

町史を含めた書籍、ネット上、そして上述の通り地元に問い合わせをしても飛行場の正式名称が不明のため、

「西郷湾の飛行場」ということにさせて頂きました。

D20_0032.jpg

赤マーカー地点。

更に隠岐の島町教育委員会様から頂いた資料によれば、

「日東航空が西郷に就航したのは、昭和37年7月20日のことで、その日の西郷湾内付近は民間飛行機による営業運行の開始に期待と物珍しさで沸き返った。二十日間の不定期運航として、10月10日から11月10日まで定時運航とした。玉造湖岸(宍道湖)に着水した。 」

とのことです。

頂いた資料には当時の写真数点もあり、湾内に浮かぶ飛行艇の周囲には、写真で確認できるだけで12艇がを取り囲んでいます。

また、桟橋と思われる場所から湾内に浮かぶ飛行艇を大勢の老若男女の島民が見物する様子があります。

桟橋と飛行艇の距離は、50mあるかないかに見えます。

恐らく桟橋に向かっている小舟と思われる写真があり、乗船している12人のうち体の向き等で確認出来ない人もいるのですが、

半数はスーツ姿です。

また、飛行艇の主翼の一部と思われるものが写っている写真もあり、

乗客が飛行艇から渡船に乗り、桟橋に向かっている様子と思われます。

「島根県/昭和の残像・西郷湾の水上飛行艇」によれば、

湾に飛行艇が着水すると、地元の人たちが小舟を繰って物珍しそうに見物する光景が見られたのだそうです。

D20_0031.jpg

西郷湾内にある西郷港。

前述の通り、水上機でやって来た乗客が西郷湾のドコの桟橋で乗り降りしていたかは不明なのですが、

当時の航空写真で確認しても、湾内では現在の西郷港周辺が最も栄えているので、

飛行艇はこの辺りにやってきて、乗客は渡船でこの付近で乗り降りしたら便利だったと思うのですが。。。

 

実は西郷に水上機が就航した昭和37年よりずっと早く、

大正10年にお隣の島前の別府に水上機が就航していたことがあります。

町史によれば、この大正10年の別府への就航の際、ときおり水上機が西郷にも姿を見せたとあり、

その場所は、「西郷湾内中町大社教会沖」と記されています。

これは少なくとも大正10年当時、住所的には西郷港の周辺に当たるため、やはり上の写真の辺りに水上機がいたはずです。

 

余談:「東亜航空のヘロン??」

実は西郷町史にこんな一節があります。

「隠岐に本格的に旅客機が就航したのは昭和三十五年で、東亜航空株式会社が西郷湾-別府湾-宍道湖間に、ヘロン十六人乗りを就航させた。」

西郷湾に飛行艇を就航させたのは日東航空で、使用機はマラードで、昭和三十七年のはずなのですが、

町史ではこれが、東亜航空で、使用機はヘロンで、昭和三十五年と記されています。

東亜航空は水上機の運用をしておらず、ヘロンも当然陸上機です。

手持ちの資料には、西郷湾に浮かんだり、離水する飛行艇の写真もあるのですが、

どこからどう見ても、映っているのはヘロンではなく、マラード。

どうして町史にこんなに具体的な記述が?? と不思議だったのですが、

(陸上の)隠岐空港が開港し、最初に開設されたのが、東亜航空の米子便で、使用機はヘロン(十六席)と記されていました。

多分これと混同してしまったのではないかと。

ここでこんなこと書くと、却って混乱の元になりかねないのですが、

恐らくこの第一級資料たる箇所がそのまま孫引きされたのではと思えるものがネット上に散見されますので、

記させて頂きました。

それはともかく、この飛行艇の運航は大好評で満席になる事が多く、このことが隠岐空港建設へと繋がったのでした。


      島根県・西郷湾の飛行場跡     

西郷湾の飛行場 データ

種 別:水上飛行場
所在地:島根県隠岐郡隠岐の島町中町
座 標:N36°12′11″E133°20′10″?
(座標はグーグルアースから)

沿革
1921年    島前別府~城崎温泉に水上機就航。西郷湾内にもときおり姿を見せる
1962年07月 20日 日東航空西郷湾~宍道湖路線開設。マラード機就航(10月10日から11月10日まで定時運航)
     12月 16日 隠岐空港着工

関連サイト:
ブログ内関連記事    

この記事の資料:
隠岐の島町教育委員会様
島根県/昭和の残像・西郷湾の水上飛行艇
西郷町史


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コメント 2

me-co

西郷湾は地図で見る限り、地理の教科書に出てきた「天然の良港」(マールっていいましたっけ?ちがうか?)って感じですが、離着水には疑義があるんですね。
そういえば、思い出しましたが、「隠岐の島はいいところだよ~今度こっちに来ることがあったら、是非ね!」と友達(安来在住)にお誘いを受けた事を思い出しました。あ~行ってみたいです。
by me-co (2016-05-11 01:22) 

とり

■me-coさん
本日九州から戻りました。
返事が遅れてしまい申し訳ないですm(_ _)m
不勉強なものでマールは初耳なのですが、ググったらなんか女の子キャラがズラッと。。。
関東からだと遠いですし、離島なのでおいそれと行けないですが、
皆さん親切な方ばかりでいい所でしたよ。
by とり (2016-05-16 21:14) 

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