国交省、完全自動化旅客機導入の方針 [├雑談]
「国交省、自動操縦旅客機導入の方針」
■深刻なパイロット不足
エアバスとボーイングの最新の受注残数は、今や小型機主流が時代の趨勢であることを如実に物語っている。
エアバスの受注残数は6,792機、そのうち単通路型のA320が5,580機と82%を占める。
受注数のほとんどが小型機で占められるこの傾向はボーイングの方がより顕著であり、
受注残数5,678機のうち、単通路型のB737は4,423機で、実に95%を占める。
-ボーイングが大西洋路線向け新型機開発をほぼ決定したらしい-
このニュースが業界を駆け巡ったのは記憶に新しい。
B797になるであろうこの新型機は、B787より更に小型の機体で、B737とB787の間を埋めるものとなる。
LCCの台頭と、LCCによる国内、国際線の新規利用者の掘り起こしも相まって、
小型機による多頻度運航化は現在すっかり当たり前のものとなった。
一般の利用客の利便性が高まる一方、
どんなに旅客機が小さくなり、多くの旅客機が飛び交うことになろうと、「パイロット2名乗務」という原則は変わらない。
このため運航便数が飛躍的に増加したことに伴い、パイロット不足が深刻になっている。
ボーイングが公表した「新規パイロット需要予測」によれば、
今後2032年までに世界で約50万人のパイロットが新たに必要になるという。
特に経済成長著しいアジア・太平洋での需要予測は19万人強と地域別で最も多く、世界全体の約4割を占める。
■深刻な国内の状況
中でも日本は特有の問題を抱えており、事態はより深刻だ。
現在日本のパイロット年齢別構成比を見ると、
主要航空会社では40代のパイロットが飛びぬけて多く、一方LCCには高齢のパイロットが偏って在籍している。
このため、LCCのパイロット不足は現在既に深刻な問題であり、
加えて多数を占める40代のパイロットは、2030年以降大量退職が見込まれるという、いわゆる「2030年問題」がある。
パイロットの養成は一朝一夕という訳にはいかない。
訓練開始から機長になるまでには、約15年もの年月を要する。
加えて、教官、訓練用機材、訓練用施設の確保等、育成には莫大な費用の問題もあるため、
不足してから一気にどうにかなる問題ではなく、10年先、20年先を見越した長期計画が必要である。
このため日本におけるパイロット不足問題は、
「今すぐ手を打たないと、このままでは日本の航空交通が崩壊しかねない(国交省関係者)」
という状態であり、早急且つ抜本的な対策が求められる状況といえる。
これまで国内のパイロット不足については、「外国人パイロットのレンタル」が大きな柱の一つだったが、
これから先数十年は世界的にパイロットが不足するため、
今後はむしろこの方法が使えないという前提で対策を考えなければならない。
新卒者採用、自社養成も厳しい状況にある。
一昔前は、子供たちの人気職業ランキングにはパイロットが必ず上位にきていたが、
今の子供たちに「将来何になりたい?」と尋ねると、異口同音に「人気ユーチューバー!」という答えが返ってくる。
上空で強い紫外線を浴びる機会の多いパイロットは、
「皮膚ガンのリスクが増える他、シミ、シワ等お肌年齢に悪影響」という見方がすっかり浸透し、敬遠されがちだ。
■「乗員政策等検討合同小委員会」
今後新しいパイロットがより多く必要になるのに、成り手が見つからない-
非常に厳しい現状を踏まえ、自動車の自動運転も所管する国交省が打ち出した対応策が、旅客機の完全自動操縦化。
現在の旅客機は既に自動化がかなり進んでいるが、それを更に進め、
パイロットが一切乗務しない運航方式を導入する方針。
先日、国交省航空局主催で、航空機主要メーカー、航空会社、現役パイロット、それぞれの各代表が集まり、
「乗員政策等検討合同小委員会」が開かれた。
コックピットが無人の旅客機で、安全な運航は果たして可能なのか。
現状と今後の予測についての説明の後、誰もが最も懸念するこの議題が扱われた。
■米国の主要メーカーの主張
この点について、自信たっぷりに「我々なら十分可能です」と口火を切ったのは、
米国の主要メーカー(ボーイング、ノースロップ・グラマン)。
「我々は既に、無人の戦闘攻撃機(X-47B)で空母上での運用について、既に実証済みです(下記リンク参照)。
無人機は狭い空母の甲板上で、カタパルトまで移動し、発艦し、空中給油を行った後着艦し、所定の駐機スペースに戻ります。
更には自律的な空中戦までこなしました(X-45A)。
これに比べれば、広々とした空港から旅客機を運航させることなど、遥かに容易なことです。
無人機でこれだけの開発と実験を行ったのは、この分野で世界最先端の米国のみです。
近い将来旅客機の世界に完全自動操縦機が浸透する可能性について、我々は以前から注目しており、
そのための研究開発を継続しています。
我々が次世代の自動操縦化した旅客機を発表した時、米国製の旅客機が世界を席巻することになるでしょう」
■エアバスの主張
米側のメーカーが豪語すれば、欧州のエアバスも黙ってはいない。
「A300の開発がひと段落した1970年代以降、我々は運航の自動化に向け、革新的な技術を次々導入してきました。
そしてこれらの技術革新は全て、『旅客機の無人運航(RMU:Ryokakki no Muzin Unkou)』に向けてのものだったのです。
世界中の民間機での実際の運航を通して、このRMU化に向けた着実なステップアップの歴史は既に40年にも及びます。
昨日今日オモチャを作って喜んでいるどこかの国のメーカーもあるようですが、
その開発はいずれも去年までに相次いで中止されているという点を、
彼らに代わり我々は皆さんに報告しない訳にはいきません。
言うまでもなく旅客機にとっては安全が何より優先されますが、
彼らと我々とでは、RMU化を進めるため実際の運航を通じて積み上げてきた実績がまるで違うのです。
RMU機が実際に運航を開始する時、「パイロットが乗らない旅客機なんて」と乗客が不安を感じるのは無理からぬことでしょう。
その点は我々も承知するところですが、エアバス機のこれまでの技術改革の延長線上にRMU化はあり、
しかもそれはもう手を伸ばせばすぐそこにあるものです。
我々はRMU化に向けた開発をこれまで同様続けてゆきます。
世界中の乗客が安心して乗りたいと望むのはどのメーカーの旅客機か、それは明らかです」
完全自動化の技術開発について欧米の主要メーカーの発言は自信のほどをうかがわせるものだった。
相手企業に対する対抗心露わな両陣営の姿勢は、自動操縦機開発を今後も押し進め、
是が非でも覇権を取りたいという強い思惑の表れでもある。
■開発
実は旅客機の基本的な操縦そのものはそれほど難しいものではない。
「勘のいい人なら、一ヶ月程度で一応の操縦はできるようになるはずです(会議に参加した某現役パイロット)」。
これは操縦の自動化についても同様で、操縦技術の中でも最も難しいとされる着陸でも、自動着陸の技術は既にある。
しかし、難しいのは基本的な操縦以外の分野であり、旅客機の完全自動化に向けては、
単に基本的な操縦ができる以上のことが要求される。
まず、大小様々なトラブルが発生した時、即座に原因を見極め、適切な対処をしなくてはならない。
同時に様々な操作が求められる着陸と比較すると、離陸は決められた速度になったら操縦輪を手前に引けばよい。
それでも、パイロットにとって最も難しい、もしくは最も緊張するのは、しばしば離陸であるとされる。
加えて現在旅客機の運航には、経済性も厳しく求められ、
変動幅の大きい燃料費と、あまり変動しない保険料、駐機料、整備費、人件費等を総合的に勘案して、
巡航高度、巡航速度を決めなければならない。
更に乗客にとって快適な飛行となるための配慮も必要となる。
「同じフライトは1つとしてない」という言葉の通り、様々な条件下で安全性、経済性、快適性を追求し、
的確な判断を下せるようになるには、長い年月を要する。
機長になるのに15年もの経験が必要なのはそのためだ。
そして、それだけ経験を積んで晴れて機長に昇進しても、
新米機長とベテラン機長とでは、見る人が見れば、経済性、快適性に大きな差が出るという。
自動操縦旅客機が様々な条件を総合的に判断し、最適な判断を下すためには、
ソフト開発の際に膨大なアルゴリズムの構築が必要となるが、完成したプログラムが本当に適正なものかどうか、
大勢の乗客の命を預けて本当に不安がないものといえるかどうかは、
やはりパイロットの監視下で実際に繰り返し飛ばして試した方が良い。
このため国交省としては、一気にコックピットのない旅客機を導入するのではなく、
現行の旅客機に完全自動操縦のシステムを搭載し、
コックピットは残したままで、先ずは従来通り2名乗務で運航を続けたいとしている。
基本的にパイロットは操縦には一切かかわらず、コンピューター任せにするが、
万一コンピューターが何らかの不適切な判断をした場合は、即座にパイロットが主導権を奪うことが可能なシステムとする。
その上で、自動操縦システムのモニター役となり、基本的な動作の安定性、判断の的確性等を評価する。
実際の運航を通じて、パイロット、航空機メーカー/自動操縦システム開発社が共同でシステムの信頼性を高めたいとしている。
その後状況を見ながら、2名乗務→1名乗務→完全自動操縦 と進めたい考えだ。
メーカーによれば、最近の旅客機はどれも自動化が大幅に進んでいるため、
完全自動操縦システムを組み込む改修は、1機当たり1日程度で済む見込みであるという。
■懇談会では
前述の懇談会では、それぞれの立場から様々な意見が飛び交った。
パイロット代表として参加した某機長は、
「1万メートルでコ・パイに操縦を任せてお昼寝するのが最高に気持ちイイのになぁ。。。
1名乗務になったら、CAに起こしてくれるよう頼めばいっか~」と呟き、
それをうっかり隣席の航空会社側、航空局関係者に聞かれてしまい、「いま、なんて!?(怒)」と問い詰められ、
慌てて弁解する等、白熱した議論が続いた。
当初予定していた時間を大幅に延長して話し合いは続いたが、話は途中から思わぬ方に流れた。
「そういえば遠隔操作の無人機は既にたくさん飛んでますよね」
「それだ! 遠隔操作なら、旅客機もすぐに無人化できるじゃん!」
「でも1機飛ばすのにどうしてもパイロットは1名必要ですよね…」
「遠隔操作なら、同時に何機も操縦できる!」
「着陸が重なっちゃったらどうするんですか?」
「その時は1機を下ろしてる間、残りの画面は一時停止すれば大丈夫!」
「遠隔操作なら、わざわざ空港まで行かなくても、自宅でできるな~」
「巡航中はおこたでのんびりミカン食べながらテレビみたり~」
「巡航は倍速にしたり、スキップすればいいじゃん」
「おお、アタマいい!」
国交省の計画では、2018年中にJALとANAでそれぞれ10機程度に完全自動操縦のシステムを搭載して、
2名乗務で運航を開始、2019年に1名乗務、2020年に完全自動操縦機を本格導入したいとしている。
【参考】エアバスがコンセプトデザインを公表した空飛ぶ無人タクシー「バハナ」
関連サイト:
X-47B発艦、着艦■
X-47B空中給油■
国交省発表「完全自動操縦旅客機について」プレスリリース■
4月1日にこの記事が読めなかったのが残念!
今日は4月3日、仕事は休みなんですが、午前中は中央消防署へ書類を持って行ったりと、今遅めの昼食を摂りながらコメしてます(^^)v
自動操縦旅客機、乗りたいような乗りたくないような(;^ω^)
by 鹿児島のこういち (2017-04-03 14:31)
恒例のエイプリールフール
今年も力作・ご苦労様です!
私も4月1日に読まなくて、申し訳ありません。
本物のP訓にも読ませてあげたいですね。
by guchi (2017-04-04 07:08)
■鹿児島のこういちさん
まだまだお忙しいみたいですね。
お疲れ様ですm(_ _)m
実際に自動操縦の旅客機出たら、相当怖いでしょうね~。
■guchiさん
ご無沙汰しております。
オイラとしましては、こうしてコメント頂けるだけで嬉しいです^^
by とり (2017-04-05 05:57)